第1戦プレビュー
いきなりフルグリッドの開幕戦、スーパーバトルはもはや必然!
2年ぶりにスーパー耐久は、スポーツランドSUGOで幕を開けることとなりました。いきなりフルグリッドの大盛況ですが、これも前面に打ち出した参加型カテゴリーであることに対し、高い評価を得られたからなのでしょう。特にGT3クラスを設けて3年、ST-5クラスを設けて4年。初年度はともに1台からのスタートでしたが、年々着実に台数を増やしています。
当初は極端に速さの違う車両が走るクラスの併設に、異を唱える者も少なくはなかったのですが、そこは20年以上の歴史を誇るスーパー耐久には、マナーの良さという誇るべき文化がありました。速い車両は遅い車両をスムーズに抜いていき、遅い車両はできるだけ後方に視線を向けて、速い車両が来たらラインを譲る。こういったマナーがしっかり守られていることによって、これまで重大な接触事故が発生することがありませんでした。
それでなお、昨年は鈴鹿サーキットにおいて、悼ましいアクシデントが発生してしまったことは忘れることはできません。単独でのクラッシュではありましたが、同じような不幸を重ねないためにも、装着が望ましいと従来はされてきたHANSと呼ばれる救命デバイスを、今年から義務づけとしています。これでより一層レースの安全性は高まることでしょう。
より豪華なラインアップになったGT3クラス
PETRONAS SYNTIUM TEAMの連覇なるか、強敵現れるか?
さて、初年度の1台から今や7台のエントリーを集めるようになったGT3クラス。連覇を狙うPETRONAS SYNTIUM TEAM、2台のメルセデスベンツSLS AMG GT3は、今年もチャンピオン争いの核になるのは間違いありません。このチームはドライバーのラインアップを変更して、体制の強化をはかっています。1号車をドライブするのは谷口信輝選手とドミニク・アン選手、これに今年はメルビン・モー選手が加わることに。そして、28号車は片岡龍也選手とジョノ・レスタ選手、そしてファリーク・ハイルマン選手がドライブします。エントリーリストには柳田真孝選手の名がありません。実は直近になって柳田選手自身が、ブログで今年スーパー耐久にでないことが発表しています。残念ですが、チームには参戦初年度から出場しているドライバーですので、これからも陰から日向からチームをサポートしてくれることでしょう。
これを迎え撃つ強敵は、昨年以上に多いのが特徴でもあります。昨年、ニッサンGT-RニスモGT3で1勝を挙げているKONDO RACINGは、藤井誠暢選手とGAMISAN選手が引き続きドライブし、さらに今年は千代勝正選手が加わることに。また、GT-Rにはニューカマーもあり、GTNET MOTOR SPORTSは尾本直史選手、星野一樹選手、青木孝行選手という強力メンバーでシリーズを戦います。
ポルシェ911GT3Rも2台が登場。昨年、ST-1クラスで王座を獲得したENDLESS SPORTSが、満を持してこのクラスに挑みます。マシンはなんと昨年のGT300チャンピオンカーで、操るのも峰尾恭輔選手。昨年に引き続き谷口行規選手をパートナーに、さらに世界的ラリーストのTOSHI ARAI(新井敏弘)選手も加わるのですから、これは手強そう。また、昨年は峰尾選手と谷口選手とともに戦った高木真一選手は、TEAM KRMに移籍。飯田太陽選手とTakashi選手とトリオを組むことになりました。
また、フィールドモータースポーツのBMW Z4 GT3は、引き続きHIRO NISHIDA選手がドライブし、ST-3クラスから移行の堀田誠選手、そして昨年はFCJに参戦していた若手ドライバー、陣川雄大選手と組むことになりました。これまでも速さでは侮り難いものを持っていたチームなので、早く優勝が欲しいところでしょう。
ところでFIA GT3といえば、FIAがBOP(性能調整値)を定めていることをご存知でしょう。スーパー耐久の場合は参加促進のため、シーズンごとBOPを固定せず、過去のBOPでも出場できるようにしています。分かりやすく言うと、最も高性能のBOPでの参戦が可能なのです。ちなみにBMWは11年の、ポルシェは12年のBOPで、その他の車両は今年のBOPで挑むことになります。それぞれ、その年の圧倒的なスピードを記憶していることでしょう。戦いは確実に面白くなります。
その一方で残念なのは、今回ST-1クラスのエントリーがたった1台となってしまったことです。年間エントリーはもう1台あるのですが、今回は参加を取りやめ。孤軍奮闘となってしまうFaust Racing Teamですが、すでにターゲットはこう定めていることでしょう。予選では昨年マークした1分58秒499を超え、決勝では115周以上走ることと。これが達成されれば、彼らは優勝を誇っていいはずです。堀主知ロバート選手、佐藤茂選手を今年は山野直也選手がサポートすることとなっています。
チャンピオンチームは不動の体制も、
ST-2クラスとST-3クラスに、より激戦の予感
ST-2クラスは今回6台のエントリー。今年の話題はRSオガワの4連覇なるか、これがいちばんでしょう。体制はほぼ不動。20号車は大橋正澄選手と阪口良平選手の強力コンビと、岸純一郎がドライブすることになります。ランサーエボリューションIXで引き続きのエントリーですが、一説にはシーズン中にエボXへスイッチするとも。進化を求めた新たなチャレンジにも注目したいところです。
そのRSオガワに今年も真っ向から立ち向かうのは、同じくエボIXを走らせるシンリョウレーシングチームで、緒戦から2台体制としています。6号車をドライブするのは、お馴染み冨桝朋広選手と菊地靖のコンビ。7号車は昨年の途中からチームメイトとして加わった神子島みか選手、そしてロータスカップジャパンで腕を磨いてきた藤井芳樹選手、遠藤浩二選手がドライブして、RSオガワ包囲網を敷くこととなります。そして、年々力をつけてきているTOWA INTEC RacingはインプレッサGVBでの参戦。大澤学選手と吉田寿博選手、松田晃司選手の強力トリオは、もはや優勝せずにはいられないはず。やはり打倒RSオガワに全力を尽くして来ることでしょう。
昨年はOKABE JIDOSHA motor sportの小松一臣/杉林健一/増田芳信選手組が、チャンピオンに輝いたST-3クラス。RX-7は殿堂入りし、今年はフェアレディZ33にスイッチ。これにより、車両的なラインアップは昨年と大きく異なり、6台の新旧フェアレディZ、そして2台のIS350と1台のGS350、レクサスのサルーンカーによって対決が繰り広げられることとなりました。小松選手組の14号車はもちろん、3台体制で挑むOKABE JIDOSHA motor sportsは、5号車が今村大輔/安宅光徳/白井剛選手組、15号車は長島正明/田中徹/田中哲也選手組で、ドライバーを一切代えずに挑みます。これはチームワークを重視してのことでしょう。今年も力強いレース運びが期待できそうです。
そして、テクノファーストレーシングチームは、2台ともZ34に改めての参戦となります。34号車は引き続き佐々木雅弘選手と前嶋秀司選手がドライブし、王座奪還に全力を尽くすのは言うまでもないでしょう。おそらくフル参戦となるであろう、B-MAX ENGINEERIGも強力な存在です。ドライブするのはF3-Nクラスの開幕戦で表彰台に上がったばかりのDRAGON選手、そしてスーパーGTでGT500への昇格を許された関口雄飛選手。今勢いに乗っているコンビですからね、侮ることはできませんよ。
IS350を走らせるTRACY SPORTSは、38号車を藤田竜樹/植田正幸/川口正敬選手組、39号車を兵頭信一/佐々木孝太/橋本達也選手組としての参戦に。OTG Motor Sportsは佐藤晋也/吉本大樹/脇阪薫一選手組で、GS350を走らせます。それぞれビッグトルクが自慢で、熟成が進んだ今、フェアレディZ勢を相手に互角の戦いを昨年も繰り広げましたが、今年はひょっとして……。壮絶なバトルが繰り広げられること、請け合いです!
新勢力が鍵を握るか、ST-4クラス!
そしてST-4クラスにはトヨタ86が急増。
今年は緒戦から4台が挑むことになります。オフの間の開発で、ホンダ勢との差をどれだけ詰めているか。ドライバーの顔ぶれは、4台ともに豪華なので、いつ勝ち名乗りを挙げてくれるのか楽しみです。ムゼオチンクチェントレーシングチームが持ち込む、2台のアバルト・アセットコルセは実力未知数ながら、86にも匹敵するほど、楽しみな存在です。
ST-5クラスは、今年もヴィッツ、フィット、デミオによる三つ巴の戦いに。ここまで2連覇のターマック・プロレーシングチームが、Aドライバーを後藤比東至にスイッチしてきたのが気になるところ。また、バースレーシングプロジェクトのフィットも、もう辛酸をなめ続けていることを良しとは思っていないはずです。ホットな戦いに期待しましょう。
なお、この2クラスは、文章が長くなってしまったので、ラインアップの紹介に関しては次回とさせてください。気になる週末の天気ですが、この原稿を執筆している火曜日の段階で、日曜は曇り時々雨、降水確率は50%と……。できれば、すっきりした天気の下でレースしてもらいたいんですけどね。予想される最高気温ですら12度ですから、4月ももう下旬とはいえ、服装にもまだ気を配っていただければ。
さぁ、スーパー耐久、その幕開けは間近です。
(はた☆なおゆき)