決勝レポート 第1レース
初開催のインジェラウンドは、#28 PETRONAS SLSが連勝飾る
韓国のインジェ・スピーディウムを舞台に、スーパー耐久シリーズ第2戦の決勝レースが5月26日(日)に開催された。地元韓国のレースファンのみならず、日本からもファンが訪れ、盛況を呈した戦い。第1レースは #28 PETRONAS SYNTIUM SLS AMG GT3を駆る、ファリーク・ハイルマンがポール・トゥ・ウィンを達成。第2レースもまたチームメイトのジョノ・レスタが制し、予選とも合わせてポイントのフルマークに成功している。
第1レースはハイルマンのSLSが総合優勝。青木のGT-Rは無念のリタイア
ST-3は佐藤のGS350が、ST-4は植松のS2000、ST-5は奥村のフィットが優勝
新たに建設された韓国のインジェ・スピーディウムのオープニングイベントとして開催されたスーパー耐久シリーズ第2戦。
本来、開幕戦として行われるはずだったスポーツランドSUGOでのレースはご存知のとおり、悪天候のため中止となっていることもあり、これが実質的なシーズンのスタートとなった。
決勝当日のサーキットは雲にこそ覆われているものの、雨の心配はなさそう。ただし、日本同様5月とは思えぬほどの暑さの中で行われることとなった。9時から30分間に渡って行われたフリー走行では、予選同様 #28 PETRONAS SYNTIUM SLS AMG GT3が好調。レスタはコースコンディションが向上したこともあり、予選を上回る1分34秒834をマークする。
そして、迎えた第1レース。ここでいきなりハプニングが発生する。青木孝行のドライブする #81 GTNET ADVAN NISSAN GT-Rが、グリッドに着こうとエンジンをかけるも始動せず。必死の修復で後に始動するも、ピットスタートを余儀なくされてしまったのだ。
強敵がいなくなったことで、チームメイト同士の戦いに専念できるようになったのが、ハイルマンと #1 PETRONAS SYNTIUM SLS AMG GT3を駆るメルビン・モー。2台でスタート直後から激しい先陣争いを繰り広げ、まず1コーナーにトップで飛び込んだのは、もちろんハイルマンだった。その後しばらくは食らいついていたモーながら、4周を過ぎたところから徐々に遅れを取るように。
逆にハイルマンはペースを上げて最大で28秒ものリードを築く。 もちろんピットからは終盤抑えても大丈夫だとの指示が飛ぶが、その差が見る見るうちに縮まっていく。これはトラブルか…と思われたものの、実はハイルマンによる演出。最後は横に並ばれるまでとなるも、「みんな、いい写真が撮れたでしょう」とゴール後にニッコリ。PETRONAS SYNTIUM TEAMが今季初レースで見事ワンツーフィニッシュを達成した。
一方、ピットスタートながら激しい追い上げを見せ、4周目にはなんと総合7番手にまで浮上していた青木が、その次の周にはピットに入ってくるではないか。「2周目に前のクルマと当たって、当たりどころが悪くてパワステのオイルラインを切っちゃったんです」と青木は無念のリタイアを決意する。
ST-3クラスは、スタート直後、#80 PETRONAS TWS GS350の佐藤晋也が、#38 TRACY SPORTS IS350の藤田竜樹に差をつけるが、徐々にアンダーステアに苦しむようになり、終盤は接近戦となってしまう。何とか逃げ切りを果たすも、「フラフラの中で走っていて、ひどいブロックこそしなかったのですが、少しきついレースでした」と内容には不満そう。
ST-4クラスでは予選トップだった #48 DIJON IS WAKO’S ED DC5の太田侑弥を2周目にとらえ、トップに立った #41 TRACY SPORTS ings S2000の植松忠雄が、徐々に差を広げて、最後は7秒差の圧勝に。「久々のレースだったんですが、腕が鈍っていなかったことが非常に嬉しかったですね」と笑顔を見せた。3位は #18 コスモソニック・FK・ings・FT86の浅野武夫が獲得。
ST-5クラスでは #19 BRP☆HYPER ECU C72制動屋J’Sフィットの奥村浩一、#99 RS☆R DIXCEL NUTECデミオの平井隆一とで激しいトップ争いが繰り広げられた。「まるでワンメイクレースみたいなバトルをさせてもらいました」と奥村が語るように、目まぐるしく順位を入れ替えたものの、終盤はその奥村が逃げ切ることとなった。
なお、韓国チームによるST-Kクラスは、#250 INJESPEEDIUMストックカーを駆るキム・ドンウンの圧勝。総合でも4位に食い込んだ。
第1レース総合優勝/#28 PETRONAS SYNTIUM SLS AMG GT3
ファリーク・ハイルマン
「すごく嬉しいよ。これが実質1戦目となるわけで、チャンピオン目指して、この勢いで最後まで行きたいね。途中メルビンとはかなりの差があったけど、チームからもう飛ばさなくてもいいという指示もあったし、最後はタイヤも厳しくなってきたのでペースを落としたんだ。トラブルが起きたかと思われたかもしれないけどね(笑)。片岡さんに一言? そうだね、ここにいなくて残念でしたね。でも、この勢いで今年はずっと勝ち続けましょうね!」
決勝レポート 第2レース
第2レースもレスタのSLSが総合優勝。星野のGT-RとアンのSLSが激しく2位を争う
土壇場の大逆転、ST-4では村田が優勝。86で初めての優勝を飾る!
第1レースをリタイアした #81 GTNET ADVAN NISSAN GT-Rは、インターバルの間に完全に修復され、星野一樹とともに無事スターティンググリッドに着くことに。#28 PETRONAS SYNTIUM SLS AMG GT3のレスタとは同タイムを記録していることもあり、決勝も大接戦になることが予想された。実際、スタート直後に激しいつば競り合いを演じるが、ここに #1 PETRONAS SYNTIUM SLS AMG GT3のドミニク・アンも加わったことで、様相に変化が。
アンが第1ヘアピンで星野のインを刺してきたからだ。それでも星野は必死に踏ん張り、次のコーナーで抜き返すも、その間にレスタは明らかなリードを築くことに。
それでもトップ浮上を狙った星野は、「最初の2周で向こう(レスタ)の方が完全に速いことが分かったので、プッシュするのはやめて2位狙いで」と作戦を切り替えることに。
一時は4秒ほどの差をつけていたものの、終盤はアンが急接近。しかし、しっかりガードを固めた星野は辛くも逃げ切りを果たし、2位を獲得することとなった。
なお、#3 ENDLESS ADVAN PORSCHEの峰尾恭輔はデフトラブルのため、わずか4周でリタイアを喫している。
ST-3クラスでは、ミン・ウーのドライブする #250 INJESPEEDIUMストックカーに行手を阻まれ、#80 PETRONAS TWS GS350の吉本大樹が、2周目に #38 TRACY SPORTS IS350の植田正幸にトップを奪われてしまう。しかし、離れることなく続いて「タイヤを使わされてしまった」と語る植田を、10周目に吉本はパス。その後、植田には3速がなくなるトラブルもあり、#80 PETRONAS TWS GS350はこの週末、すべてのセッションをトップで終えた。「晋也からのインフォーメイションで、コースコンディションの変化に合わせてセッティングも変えていったんですけど、今度はすごくオーバ―ステアで。だから、決して楽なレースではなかったんですけどね」と吉本は苦笑い。
ST-4クラスでは、予選トップだった望月大地の #93 SKR ENGINEERING S2000にトラブルが発生。オープニングラップでリヤ左のサスペンションアームが折れ、ピットインを余儀なくされたのだ。これによってトップに躍り出たのは #48 DIJON IS WAKO’S ED DC5の鶴田和弥。#13 ENDLESS DIJON ADVAN SAYAMA 86の村田信博がぴたりと食らいついて離れず。緊張感のあるトップ争いが続くも、村田は逆転の決め手を欠いているかに思われた。だが、ゴール間際に千載一遇のチャンスが。なんとラスト2周の第1ヘアピンで鶴田がガス欠症状に見舞われ、一瞬ながらも失速。この隙を逃さず、次のコーナーで村田は前に出ることに成功したのだ。
「新しいクルマで最初のウィナーになれたことを、非常に光栄に思います」と村田。その言葉どおり、86で初めてスーパー耐久を制することになった。3番手には20周目まで#333 オートバックス.GLORY-R.FN2の野間一がつけていたものの、突然のエンジントラブルによりリタイア。その結果、3位は#41 TRACY SPORTS ings S2000の筒井克彦が獲得した。
そしてST-5クラスでは、スタートから速さを見せた#19 BRP☆HYPER ECU C72制動屋J’Sフィットの梅本淳一が圧勝。「セットアップも進んで、さらに速さに磨きをかけることができました。楽勝でしたね」とニッコリ。2番手を#33 WEDS・ENDLESS・TAIKOヴィッツの深沢雅文と#99 RS☆R DIXCEL NUTECデミオの野村浩史とで争うが、ベテラン深沢の逃げ切りはならず。18周目に野村が逆転し、2位を得ることになった。
なお、ST-Kクラスではまたも#250 INJESPEEDIUMストックカーが優勝。ミンも総合4位に食い込んでいた。
第2レース総合優勝/#28 PETRONAS SYNTIUM SLS AMG GT3
ジョノ・レスタ
「この週末、僕らの28号車はずっといいタイムで走っていて、決勝レースでも最高の結果で終えることができました。ベストを尽くせたので、非常に喜んでいます。前半は頑張って、後半は90%ぐらいのパワーで走っていましたが、最終ラップにもう一度頑張ってファステストラップを出すことができました。今年のニッサンは強そうだけど、ここで大量にポイントを奪えたことで、今後のレースをかなり有利に進めていきたいですね」
(はた☆なおゆき)