決勝レポート
ST-2クラスとST-5クラスで、早くもチャンピオンが決定する!
オートポリスを舞台とする、スーパー耐久シリーズ第4戦の決勝レースが8月2日(日)に開催され、青空の下で激しいバトルが繰り広げられた。総合優勝を飾ったのは#3 ENDLESS ADVAN BMWを駆る、YUKE TANIGUCHHI/峰尾恭輔/元嶋佑弥組で、今季3勝目をマークした。また、ST-2クラスでも#59 DAMD MOTUL ED WRX STIの大澤学/松田晃司/吉田寿博組が、ST-5クラスでも#69 BRP★J’S RACINGフィットの大野尊久/梅本淳一組が3勝目を挙げた結果、残り2戦を待たずして、チャンピオン獲得が決定した。
ST-Xクラスは、ENDLESS ADVAN BMWが3勝目をマークする
予選の行われた土曜日同様、日曜日のオートポリスも天気に恵まれた。4回目にして決勝レースがようやく完全なドライコンディションの中で行われることになったが、暑さに関しては予想以上。ハードなレースになるのは、もはや必至と言えた。
早朝8時からフリー走行が行われ、ここでトップタイムをマークしたのは#24 スリーボンド日産自動車大学校GT-Rの藤井誠暢。これに#5 MACH MAKERS GT-Rの藤波清斗、#1 GTNET ADVAN C-WEST GT-Rの高星明誠が続いており、今度こそGT-R勢の優勝なるかと思われた。決勝レースがスタートしても、吉田、藤波、高星の順でレースをリードした。
しかし、フリー走行中のピット作業違反のペナルティで、#24 スリーボンド日産自動車大学校GT-Rが4周目にドライビングスルーを行わざるを得ず、順位を落としたのを皮切りに風向きが変わる。19周目にマフラーの損傷で、#1 GTNET ADVAN C-WEST GT-Rはピットに入らねばならず、さらに20周目にはトップに立ったばかりの#5 MACH MAKERS GT-Rがバックマーカーと接触し、最終コーナーでスピン。その際に足まわりを傷め、やはり長いピットでの修復を強いられることとなった。
これで労せずして#16 REAF REAL ESTATE KiiVA BMWの片岡龍也がトップに立ち、2番手には#3 ENDLESS ADVAN BMWの元嶋佑弥が。片岡はじわりじわりと元嶋を引き離していったが、差を12秒ほどに留めたことが#3 ENDLESS ADVAN BMWにとっては、後に福音をもたらすこととなる。34周目に元嶋からYUKE TANIGUCHIに交代、それから3周後に#16 REAF REAL ESTATE KiiVA BMWもピットに。HIROMASA NISHIDAがコースに戻った時にはTANIGUCHIの前だったものの、タイヤが温まっている分、勢いが違った。
39周目の1コーナーでTANIGUCHIはトップに浮上すると、そのままNISHIDAを引き離し続けていった。60周目から峰尾恭輔がドライブ、それから3周の間は#8 ARN SLS AMG GT3がリードするも、佐々木孝太から永井宏明に代わった後は、峰尾が再びトップに。#8 ARN SLS AMG GT3は2番手をキープしたものの、差は30秒以上。これをしっかり峰尾は守るどころか、最後は1分にまで増やし、圧勝としていた。
永井には#24 スリーボンド日産自動車大学校GT-Rの藤井誠暢が迫り、最終ラップに逆転を果たすも、その直後にタイヤのトラブルが。抜いてきた時に軽い接触があり、右のリヤタイヤのバルブを飛ばしてしまったのが原因だ。もし、ストップすればリタイアとなるため、ゆっくりとしたペースで藤井はコースを1周。何とかチェッカーを受けて3位を獲得した。
ST-2クラスはDAMD MOTUL ED WRX STIが3勝目で連覇を達成!
ST-2クラスは、予選でトップだった#59 DAMD MOTUL ED WRX STIの大澤学のリードからレースが開始される。しかし、#20 RSオガワADVANランサーの松本武士も遅れを取ることなく続き、プレッシャーをかけ続ける。そんな中、#59 DAMD MOTUL ED WRX STIの不安材料だった予選からの水温上昇が激しくなり、12周目にはトップを明け渡す羽目に。
だが、39周目に大澤から松田晃司に交代すると、素早いピット作業に後押しされて、#20 RSオガワADVANランサーの前に。そのままバトルが続くことが予想された。しかし、50周目に#20 RSオガワADVANランサーは再びピットに入り、下垣和也から再び松本にハンドルが託されたものの、コースに入って間もなくスローダウン。リヤデフにトラブルが発生し、ピットには戻れたものの、無念のリタイアを喫することに。これにより、敵がいないも同然となった#59 DAMD MOTUL ED WRX STIは、最後に再び大澤が乗り込み、余裕のフィニッシュに。今季3勝目を獲得するとともに、早々と王座を掌中におさめることとなった。
ST-3クラスは岡部自動車DIXCELチームテツヤZ34が、久々の勝利を挙げる
ST-3クラスもまた、予選トップの#15 岡部自動車DIXCELチームテツヤZ34のリードから開始される。しかし、長島正明がトップをキープできたのは5周目まで。代わってトップに立ったのは、#38 ムータレーシングTWS IS350の阪口良平で、いつものような韋駄天ぶりを見せてトップを快走。そればかりか1時間30分以上、無交代で走り続けた。だが、間もなく交代という、45周目にブレーキキャリパーのトラブルが発生。クラッシュで無念のリタイアを喫してしまう。阪口に怪我がなかったのは、何よりだった。
そこから先は#34 asset ingsテクノRC350、#195 岡部自動車ZEROSUN195 Z34、#15 岡部自動車DIXCELチームテツヤZ34、#62 DENSO Le Beausset RC350が同一周回で争い合う。しかし、長島〜田中哲也のリレーを早めに済ませていた、#15 岡部自動車DIXCELチームテツヤZ34が最後に笑うことに。49周目からのロングランも若い田中徹は難なくこなして、最後は15秒差での優勝を飾った。2位は#34 asset ingsテクノRC350の前嶋秀司/佐々木雅弘/佐藤公哉組が、そして#195 岡部自動車ZEROSUN195 Z34の安宅光徳/小泉和寛/輿水敏明組が3位を獲得した。
埼玉トヨペットGreenBrave 86が激戦の末に、ST-4クラスで初優勝
序盤のST-4クラスは、#95 孚海國際×SPOON S2000の松井猛敏、#93 TAKUMI×UEMATSU×SKR S2000の植松忠雄、そして#86 TOYOTA Team TOM’S SPIRIT 86の井口卓人による激しいトップ争いが繰り広げられた。しかし、終盤には光景が一変する。
トップを争い合うのは#86 TOYOTA Team TOM’S SPIRITの蒲生尚弥、そして#52 埼玉トヨペットGreenBrave 86の服部尚貴だった。ペースでは服部の方が上回ったものの、ストレートでは蒲生のペースの方が優って、なかなか抜きあぐねていたものの、76周目には逆転。再逆転を狙った蒲生を、最後まで抑え抜いて番場琢、そして平沼貴之とともに、初めてST-4クラスで表彰台の中央に立つとともに、ランキングトップに1日で返り咲いた。3位は#13 ENDLESS ADVAN 86の山内英輝/村田信博/島谷篤史組が獲得した。
ST-5クラスでも#69 BRP★J’S RACINGフィットが3勝目を挙げ、王座を獲得!
今回は助っ人を加えず、大野尊久と梅本淳一だけで挑んだ#69 BRP★J’S RACINGフィット。予選と決勝レースの序盤は、#2 ホンダカーズ野崎with CUSCO & BOMEX FITの先行を許したものの、大野が山田英二を8周目にかわしてトップに立つと、そのままリードを広げていくことに。梅本に代わった後も展開は代わらず、最終スティントを再び大野が担当する頃には、もはや後続にペースを合わせて走ればいいまでに。
難なく逃げ切りを果たして3勝目を飾った、#69 BRP★J’S RACINGフィットの大野と梅本が、残り2戦を待たずしてチャンピオンも獲得することとなった2位も#19 BRP★J’S RACINGフィットの古宮正信/奥村浩一/新垣元組が獲得し、ワンツーフィニッシュで花を添えることになった。
ST-Xクラス優勝 #3 ENDLESS ADVAN BMW
YUKE TANIGUCHI
「今回は元嶋が頑張ってくれて、いい感じで交代できたので、『あのギャップだったら、行けるんじゃないか』っていうのはありました。前に出て、しばらくして後ろが見えなくなってからは、アクシデントのないように安全運転で。1年に3勝もしたのは過去にあったかな……、今年は一度だけリタイアしたけど、あとは全部勝っているので、チーム力の部分が大きいと思いますね」
峰尾恭輔
「レース前に『勝ちます』と言っていましたので、公言どおりになりました。レースには強いクルマだと思っていたので、予選はちょっときつかったんですけど、レースセットには自信はあったので、最初に元嶋が片岡についていってくれた時点で、『これは勝ったな』と。僕が乗った段階で、クルマの調子はすごく良かったし、後ろも離れていたんで、最後までとりあえずこの順位を守って、たどり着かせるだけ、という感じで走っていました。やっぱり、スーパー耐久は1周のタイムじゃないので、こうやって何十周も速いペースで走れるクルマを作っていくのが大事だな、と今日思いました。次回からも速さを見せられるかどうかは厳しいと思うんですけど、強いレース展開で、上位を取っていきたいですね」
元嶋佑弥
「スタート直後、あまりうまくいかなかったんですけど、その後ちょっとずつ流れに乗ることができて。本当にここまでミスなくやれているので、いい結果を残せました。レースに強いところをシリーズ終盤戦も見せられたらいいと思っています。チャンピオン目指して、頑張ります」
ST-2クラス優勝 #59 DAMD MOTUL ED WRX STI
大澤学
「スタート直後は良かったんですが、混乱してきてからはだいぶ水温が上げって、その後ずっと100度越えでパワーが落ちて。抜かれた後はついていくのが、やっとでしたね。それでも離れずについていけば、松田さんがやってくれると分かっていたので、落ち着いてレースができました。ただ、実はウチもギリギリでしたね。水温が高くて、エンジンがいつ逝っちゃうんだろうって心配だったんですが、きつかったですね。だからこそ、本当に勝てて良かった。でも、チャンピオンの実感は全然ないですね。ゴールした後、『決まっちゃったみたい』って言われて、『えっ』って(笑)」
松田晃司
「序盤は逃げてほしかったけど、そう甘くはなかったですね。タイヤはフロント2本交換した割には、なんで(#20 RSオガワADVANランサーが)後ろにいるの、って感じでした。まぁ、タイトルが決まる時はこんな感じですよね。自分で携わっていても、チームに強さがあるというか。努めて回転を抑えて、いたわって走って、そういう意味では仕事はしんどかったけど、怪我の功名でチャンピオンをいただけて嬉しいですね」
吉田寿博
「今回は予選だけ走って、決勝は見守っていたんですけど、チームの強さを感じたなぁ、っていうか。ST-2クラスはトラブルが多すぎるんで、ウチも簡単に勝てたわけじゃなくて、チームのおかげで勝てたな、という感じがしますね。残り2戦はリハビリがてら、出させてもらえたらいいな、と思っています」
ST-3クラス優勝 #15 岡部自動車DIXCELチームテツヤZ34
長島正明
「大したことやっていないんだけど、他のふたりが頑張ってくれて。5周目まで良平を抑えてくれればいい、っていう。それだけはできました。みんなのおかげと棚ボタと、これも日頃の行いです!」
田中徹
「実は胃痛、胸焼けが乗った時からありまして、ブレーキ踏むたびに『オエ〜』って。緊張じゃなく、たぶん昼ご飯が(苦笑)。ペースから言えば、全然ダメでした。だましだまし頑張りましたけど、ちょっと苦かったです。もちろん優勝は嬉しいですけども」
田中哲也
「前に優勝したことは覚えていないですけど、S耐で言えば、スプリントの鈴鹿以来。でも、全員で優勝したのが、すごく嬉しいですね」
ST-4クラス優勝 #52埼玉トヨペットGreenBrave 86
服部尚貴
「86/BRZレースに続いて、これでグルっと勝てた(笑)。86号車(TOYOTA Team TOM’S SPIRIT 86)との争いになって、クルマのペースも良かったんだけど、ただ真っすぐだけはあちらの方が良かったんでね。ずっと抜くポイント探していて、抜きあぐねていたけど、最後一か八か、タイヤかすに乗ってもいいやと思って、アウト側から100Rを外から一回行って、それをきっかけにうまく仕留められました。でも、ホント今日はいいクルマでした、クルマがすごく良かった、楽なクルマでした」
番場琢
「SUGOは狙っていたんですけど、トラブルで勝てなくて、悔しい思いをして。でも、僕らドライバーだけじゃなくて、本当に真剣だったので、メカの方が悔しがっていたんです。ドライバーはトラブルだから仕方ないね、って気持ちだったんですが、メカの方はそれが許せなかったみたいで、本当に必死に頑張ってくれていて。だから、ドライバーだけでなく、みんなで勝ち取った勝利というイメージが強いですね。すごくいいチームで、毎戦成長しているような感じです。それと、やっぱり平沼さんの努力かな、と思いますね。30分以上、平沼さんが乗った上で、勝つというのが実現できて良かったです」
平沼貴之
「昨日、0.5ポイント差で逆転されましたが、また返り咲けて良かったというのと、ある程度リードもできたので、この後ふたつもしっかりポイントを獲れば、念願のチャンピオンも獲得できるのかな、と思います。基本、作戦どおりでいけたので、スタート担当の僕もしっかりと仕事できたので、その後、番場さん、服部さんに安心してハンドルを託すことができました」
ST-5クラス優勝 #69 BRP★J’S RACINGフィット
大野尊久
「もうちょっとチャンピオンが決まるの、あとでも良かったんですけどね。完璧って言ったらおかしいですけど、今回はいいペースで。ウチはタイヤを保たすセットを一生懸命考えてきたんで、それでタイヤの保ちが良かったのと、コーナーの立ち上がりも速かったので、ストレートにもつながって、ペースをこっち側で作ることができました。梅本選手もいいペースで、ちゃんと突き放してくれて、最後はもらったマージンを確保すればいいだけだったので、後ろを見ながらレースできました。次の岡山は、AE86で最初にチャンピオンを獲った、デビューしたサーキットでもあるので、スカッと勝ちたいですね」
梅本淳一
「なんかシリーズも決まっちゃったみたいです、知らなかったんですけど。今日はいいレースができました。というのも、いつも井入くんに助けてもらっていたんですけど、今回は欠席で、大野とふたりで絶対に勝たなきゃいけないと。『井入がいないと勝てない』と言われていたんで、それだけは(笑)。でも、本当にいいクルマを作って、今日はロングのセットが決まっていたので、予選はちょっと負けちゃったんですけど、決勝は絶対的な自信があって、実は。だから、チームの総合力ですね。チャンピオンの実感は、あまりないですね。僕ら、勝つことしか考えていなかったんで。昨日の晩もお酒を控えました、すごく大事なことです(笑)」
(はた☆なおゆき)