SUPER TAIKYU

RACES ARCHIVE 2015

REPORT

第5戦プレビュー

引き続き王座決定の場となるか

 全6戦で争われるスーパー耐久も、残すは2戦となってシリーズは佳境へと突入する。第5戦の舞台、岡山国際サーキットはテクニカルコースと一口に語られるが、フルブレーキングを要するセクションもあれば、リズムを要する複合コーナーもあり、また2コーナーやWヘアピン以降のセクションはアクセルを踏んで回るなど、実に要素は多岐に渡る。まさに一筋縄では行かないサーキットなのだ。

 9月に入って気候も穏やかになり、もう強烈な暑さに悩まされることはないだろう。実際、この原稿執筆時の天気予報では、土曜、日曜の最高気温は26度、27度とされ、その点においては程よいレース日和になりそうだが、気になるのは日曜が「曇り時々雨」とされていること。どうか外れてほしいものだが……。

新たなチャンピオンが生まれる可能性は……

ST-2クラスの#59 DAMD MOTUL ED WRX STIの大澤学/松田晃司/吉田寿博組は、すでに38.5ポイントのリードを得ている。今回完走を果たせば、3年連続シリーズチャンピオンが決定する。前回は水温の上昇に悩まされたものの、対策済であろうし、何より冒頭で触れたとおり、暑さにそれほど苦しみそうもないため、手堅く走りつつも、勝利の美酒とともに真の王座決定を喜びたいと思っているに違いない。

 その一方で、宿敵#20 RSオガワADVANランサーの下垣和也/松本武士組が、エボXのテストを再開したとの情報も。熟成され尽くしたエボIXに代えて、まだ伸び代があるとされるエボXを投じることで、王座決定は阻止できないにせよ、一矢報いたいと考えているのかも。逆襲の一発をラスト2戦には期待したい。また、#7 新菱オートDIXCELエボXの冨桝朋広/菊地靖/大橋正澄組には、リタイア覚悟の新スペックエンジンが投じられたとも。こちらも大暴れが望まれるところである。

 そして、ST-Xクラス。ここは#3 ENDLESS ADVAN BMWのYUKE TANIGUCHI/峰尾恭輔/元嶋佑弥組が、#24 スリーボンド日産自動車大学校GT-Rの星野敏/藤井誠暢/高星明誠組に13ポイントの差をつけている。TANIGUCHI組が今回で決めるには、ポール・トゥ・ウィンが大前提。その上で、星野組が3位以下となることが条件で、もし2位になった場合は最終戦に持ち越すものの、最終戦でポールを奪えなければ、TANIGUCHI組が決勝を走らずとも決まりとなる。なおかつTANIGUCHI組は2位の場合でも、星野組が6位以下、たとえば完走を果たすのみの展開を強いられれば、決定となる。見る側の心情としては、最終戦まで壮絶な戦いを期待したいところだが、TANIGUCHI組にしてみれば早く決めて、すっきり最終戦に臨みたいところだろう。

 しかも、TANIGUCHIは岡山との相性抜群。2007年にJLMC(ジャパン ル・マン チャレンジ)のGT2クラスで、08年から09年をスーパー耐久のST-2クラスで、10年はWTCCのインディペンデントクラスで、11年には再びスーパー耐久でST-1クラスを制した実績を持っている。「決して得意ではないけど、なぜか相性がいい」と言うだけに、王座決定の可能性は低くないと言えるだろう。

 その一方で、昨年は星野一樹/青木孝行/尾本直史組が優勝を飾っており、実は日産GT-Rとの相性はいい。なのであるが、今年のGT-Rは御難続き。#1 GTNET ADVAN C-WEST GT-R のGAMISAN/星野一樹/吉田広樹組は、前回のオートポリスで今季初のポールポジションを奪って、「残り3戦、全部勝ちます!」と力強く宣言してくれたが、やはりトラブルに見舞われた。そろそろ他のGT-Rとも併せ、最後まで全開走りを披露してほしいもの。

間違いなく最終戦まで王座決定が持ち越される、ST-3とST-4クラス

 1位と2位の差が4戦終えて、わずか1ポイントと、近年まれに見る接戦となっているのがST-3クラスだ。前回の勝利で、#15 岡部自動車DIXCELチームテツヤZ34の長島正明/田中徹/田中哲也組がトップに浮上。しかし、#34 asset ingsテクノRC350の前嶋秀司/佐々木雅弘/佐藤公哉組もしぶとく2位でゴールしたことで、最僅差におさめることとなった。日産フェアレディZ34の熟成度合いは、もはや誰もが知るところ。その一方で、不運な展開が続いているとはいえ、#38 ムータレーシングTWS IS350の植田正幸/阪口良平/堀田誠組は、速さでは優るとも劣らず、間違いなく長島組とトップを争うことだろう。今回こそ、何事も起こらぬことを期待したい。

 そのうえで、ST-3クラスでいちばんのキーポイントとなるのは、レクサスRC350が3戦目で、どれだけ熟成が進んでいるかだ。第3戦で#62 DENSO Le Beausset RC350の嵯峨宏紀/中山雄一/山下健太/新田守男組がデビューウィンを達成しているが、長丁場に徹底した燃費走行が効いたわけで、この時まだ速さではZ34やIS350の比ではなかった。ただ、重量面とはハンデを負うとはいえ、ほとんどのユニットはIS350に共通するだけに、将来的に同等のポテンシャルになるとは理論上言えること。ただ、その時が、何時なのかが大問題。#39 SARD Racing RC350の平手晃平/柴田優作/片山義章組ともども、3台のRC350の急浮上に期待がかかる。

 ST-4クラスでは、前回の初勝利によって#52 埼玉トヨペットGreen Brave86の番場琢/服部尚貴/平沼貴之組が2位に13ポイントのリードとし、情勢的には大幅に有利になった。ただ、このクラスには勝ってなお……という計算はあえてしないでおく。2位以下は僅差でずらりと並んでおり、それぞれ大きな外しはないと予想されるからだ。なおかつ、このクラスだけ2勝を挙げたチームが存在しないため、新たな勝ち名乗りを挙げるチームすら現れそうでもある。その筆頭は、やはりランキング2位である#86 TOYOTA Team TOM’S SPIRIT 86の蒲生尚弥/井口卓人/松井孝允組ではあるまいか。

 また、FR有利なコースであるのは間違いないが、86ばかりがクローズアップされるのは心外だと、間違いなく思っているのはホンダS2000勢。また、2台のマツダロードスターも徐々に熟成が進み、今回は台風の目にもなりそう。そして雨でも降れば、脅威の存在となりそうなのが、#111 EXPRIDE G-Tech Sportster GT/Rの大瀧賢治/細川慎弥/ヘルムート・ギーセル組だ。第2戦・富士の練習走行で、なかなかの速さを見せたものの、車両規定違反があったため早々と戦列を離れていた。今回はリベンジに期待したい。

BRP★J’S RACINGフィットの大野/梅本組は、凱旋レースを飾れるか?

 正真正銘、前回でチャンピオンを決めたのが、#69 BRP★J’S RACINGフィットの大野尊久/梅本淳一組。ふたりにすれば、今回の岡山で決めたかったようで、実感が沸かない以上に、あっさり決まって拍子抜けの感もあったよう。特にTIサーキット英田と呼ばれていた頃、100台以上のエントリーを集めたAE86レースでデビューを飾り、そしてチャンピオンを決めた経験を持つ大野には、その思いが強かったという。ならば、新チャンピオンとなったからには凱旋レースを、是が非でも勝とう、そうふたりが考えているのは間違いない。なお、今回は赤星陽太郎を加えての参戦となる。

 もちろん、チャンピオンが決まろうが、残り2戦は全部勝つ、そんな気持ちでライバルたちはいるはずだ。前回は予選でトップでありながら、敗れた#2 ホンダカーズ野崎with CUSCO&BOMEX FITの山下潤一郎/山田英二組には、特にその思いが強かろう。「どうだ、まいったか」の一撃に期待したい。

 

(はた☆なおゆき)

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