SUPER TAIKYU

racesArchive2016

REPORT

第5戦プレビュー

今季二度目の2レース開催、しかもその日のうちに。どうなる? こうなる?

 熱戦続くシリーズも、残すはあと2戦。スーパー耐久シリーズの第5戦が、岡山国際サーキットで10月22〜23日に開催される。今回のレースの特徴は、グループ1とグループ2に分けて決勝レースが2回行われることで、ともに日曜日に争われるのは今年初めて。最初のレースの緊張感を残したまま、次のレースを迎えることになるのだろう。

過去の2レース開催で生まれたドラマ

 決勝レースが1日に2回行われるのは今季初と冒頭で触れたが、シリーズの歴史を紐解いても、これはかなり久々のこととなる。今年のSUGO、そして2014年の鈴鹿も2日に分けられており、実はN1耐久ラウンドシリーズとしてスタートを切った、1991年の仙台ハイランド以来。さすがに25年も経っていると、当時の雰囲気を知る者はごくわずかで、筆者もインターバルの様子が記憶に定かではない。

 ひとつはっきり記憶していたのは、クラス3で大逆転劇があったことだ。当時1600〜1301ccで争われ、シビックで大半が占められたクラスで、今で言うならST-4クラスに相当する超激戦区だった。そこで改めて、当時の文献を調べてみた。

 ポールポジションからスタートした車両が、トップでレースを開始するも、2周目のミスで5番手にまで順位を落としたことから、80周のレースで31周目にドライバー交代を行うことに。逆にトップの車両は49周目までドライバー交代を伸ばし、残り30周で50秒差は常識ならば絶望的な差でもあった。しかし、このレースは終日ウェットコンディションだったことが、追い上げる方には味方についた。69周目には9秒差とし、しばらく6秒ほどの差が保たれた。

 トップがペースを合わせていたことは容易に想像がつくが、不運だったのはガラスが曇ってしまったこと。視界を奪われ、ラスト5周で無念のコースアウトを喫し、これにて大逆転劇が成立する。そういったことが起こり得たのも、グループがふたつに分けられ、クリアラップを取りやすかったからに他ならない。

 速度差の大きい6クラスの混走レースでは、クラス違いのクルマを「抜く」、「抜かれる」ストレスは相当なものと聞く。それが極端に減るのだから、普段のレースではあり得ないことが起こったとしてもなんら不思議ではない。実際、今年のSUGOでは一度もSCが入らなかったこともあり、同じ3時間レースを走りながら、グループ2ではST-4クラスが2015年の105周から16年は113周に伸び、ST-5クラスは99周から106周に周回が伸びた。逆に3回もSCが入ったグループ1では周回数が減るという珍事も……。2レースともにSCが入らず、例年以上のハイスピードバトルとなることを期待したい。

ホンダ車の逆襲に期待がかかるST-4クラス

 今回はグループ2による決勝レースが先に行われることもあって、クラスごとの紹介はST-4クラスから進めることとしよう。目下ランキングのトップにつけるのは、村田信博/小河諒・元嶋佑弥組の#13 ENDLESS ADVAN 86。すでに3勝をマークしているものの、宿敵でもある松井孝允/井口卓人/蒲生尚弥組の#86 TOYOTA Team TOM’S SPIRIT 86も、1勝と2位2回という好成績で続いて、大きく差の広がることを防いでいる。すでにチャンピオン候補も、この2台に加え、たしろじゅん/伊藤毅/小野田貴俊組のSunOasis AUTOFACTORY 86までに絞られている。今回も、この3台がバトルの核を成しそうだが、昨年は優勝、一昨年は2位と、相性がいいのが小林康一/塩谷烈州/蘇武喜和組の#58 ウィンマックスワコーズテインDC5☆KRPだ。

 これまで牙城としていた、もてぎで今年はついに敗北を喫し、まだ未勝利。雨でも降れば、FFの利点を生かし、連勝の可能性はグッと高くなるはず。また、昨年の最終戦以来、優勝に恵まれていないS2000勢も前回からブレーキのローター、キャリパーの交換が許され、制動力は大幅に向上。前回のレースは9時間とあって、ライフ重視とされた可能性があるが、今回は3時間レースでキャパシティ自体は大幅な余裕がある分、攻めのブレーキングが見られるかも。今回のテーマはホンダ車の逆襲、86勢の連勝をそろそろ止めてしまいたいところだ。

 そもそも今回はST-4クラスが、もうひとつのオーバーオールを奪える貴重な機会。グループ1車両の陰に隠れることなく、まさに見たままの順位で激しいバトルが繰り広げられることだろう。

まだ7チームに王座獲得の権利が残されるST-5クラス

 他の6クラスは、すでに2勝、3勝しているチームが存在しているのに対し、ST-5クラスは4戦すべてウィナーが入れ替わる超混戦。フィット3が2勝を挙げているが、チームが分かれ、またロードスターNDやデミオDJディーゼルでも優勝が飾られているのはご存知のとおり。さらに合算タイムの関係上、陰に隠れてしまったが、予選のBドライバーセッションでヒロボンの#66 odulaマツダデミオ15MB、すなわちデミオDJレシプロも最速タイムを記し、このクラスは車両的にも群雄割拠状態となっている。

 その結果、第5戦を前にして谷川達也/井尻薫/野上達也組の#17 DXLアラゴスタNOPROデミオSKY-Dがトップながら、大野尊久/梅本淳一/窪田俊浩組の#69 J’S RACING★ホンダカーズ浜松北みきゃんFITが、なんと0.5ポイントという最僅差で続くことに! そればかりか、このクラスには7チームにまだ、王座獲得の権利が残されることになった。やはり2勝目を挙げたチームが最終戦に最も有利な立場で乗り込むことになるだろうが、果たしてそのチームは……。

 ここまでの展開を振り返る限り、序盤から3台ほどで激しいバトルが繰り広げられ、しばらくの間、激しくポジションが入れ替わるはずだ。その序盤にはいなかった、#17 デミオがディーゼルエンジンならではの高燃費を生かし、ピットタイミングがずれるのがその理由ながら、終盤には加わってくる、おそらくそんな展開に今回もなるはずだ。ただ、2勝目にどのチームよりも渇望感が強いのが、#69 フィットの3人。3連覇に向けて好発進を開幕戦で遂げたはずが、足踏み状態を強いられているだけに、今回は何かひと技駆使してくる可能性は十分にありそうだ。

ランボルギーニウラカンの速さや、いかに?

 午後から決勝レースが行われるグループ1は、走る前からST-1クラスのチャンピオンが決定した。今回も星野敏/荒聖治/星野辰也組の#777 D’station Porsche 991だけのエントリーとなったため、もし最終戦に#51 Diamango BMW Z4が出場して勝ったとしても、逃げ切りが決定となったからだ。だからといって、手を抜いて走るようなことはあり得まい。今までのレース以上に内容の濃い展開に、という気持ちで挑んでくることだろう。

 ST-Xクラスもまた、今回で決まる可能性は高い。内田雄大/藤井誠暢/平峰一貴組の#24 スリーボンド日産自動車大学校GT-Rを止められるのは、もはやYUKE TANIGUCHI/峰尾恭輔/山内英輝組の#3 ENDLESS ADVAN GT-Rだけとなっており、しかもその差は18.5ポイント。だから、#24 GT-Rは勝てば、最終戦を待たずして決定ということになった。逆にいうと、#3 GT-Rは残り2戦の連勝が必須条件で、その上で#24 GT-Rが表彰台を逃し続けでもしないと、逆転は困難。だから、間にできるだけ他チームが入って欲しい。

 その鍵を握る存在として、前回初ポールを奪った永井宏明/佐々木孝太/山脇大輔組の#8 ARN SLS AMG GT3がまず挙げられる。メルセデスSLSと岡山との相性は良く、中低速コーナーのフットワークに優れるクルマだけに、今回は決勝でも結果が残したい。

 そして、また初登場の車にも注目だ。それが#108 CARGUYこと、木村武史/織戸学/アフィッド・ヤジッド組のランボルギーニウラカンGT3。スーパーカーによるエンターテイメント集団、CARGUYの代表でもある木村は、前回まではフェラーリ458 GT3での出場だったが、自らをレースの世界に引き込んだ織戸とともに、満を辞してマシンをスイッチした。また、オレンジ色のGT-Rも復活を果たす。#81 Rock254 GTNETを駆るのは、山田秀明/青木孝行/大賀裕介組。この2台が加わったことで、戦況にどんな変化が出るのか、気になるところだ。

ST-2クラス、ST-3クラスにも王座決定の可能性が……

 ST-2クラスも、大澤学/後藤比東至/檜井保孝組の#59 DAMD MOTUL WRX STIが、冨桝朋広/菊地靖/大橋正澄組の#6 新菱オートDIXCELエボXに、すでに20ポイントもの差をつけているため、勝てば悲願の4連覇が達成。それどころか#6 エボXより先にチェッカーを受ければ決まりとあって、かなり有利な立場にあるのは間違いない。ただ、ここにきてエボXの進化が著しく、#6 エボXも自ら勝ってなお、間に割って入る存在が欲しいはず。その上で、最終戦に一縷の望みをつなごうと。

 そこで、注目されるのが、下垣和也/松本武士/近藤説秀組の#20 RSオガワADVANランサー。昨年からどうにも不運な展開が続いているものの、速さだけの比較なら、先の2台に決して引けを取らず。特に岡山は、Bドライバーの松本にとってホームコースであるだけに、ここは一発ビシッと決めたいと、必ず思っているはずである。

 そして、ST-3クラスでも堀田誠/阪口良平組の#38 MUTA Racing TWS IS350に王手が。しかし、嵯峨宏紀/中山雄一/平木湧也組の#62 DENSO Le Beausset RC350が前回の優勝をはじめとして、しぶとく入賞を続けていることから、#38 IS350は勝って、しかも#62 RC350が3位以下に留まることが条件であるだけに、意外に最終戦まで持ち越すかも。もちろん、堀田と阪口の意識の中には「ホームコースでの決定」が大前提として、すでにある。

 そこでTRACYSPORTSは援護の意味も込めているのだろう、#39 MUTA Racing RC350を吉村一悟/TAD JUNJUN/吉田広樹組に託すことに。また、今年まだ優勝のないフェアレディZ勢が、結果的には援護の役割を担う格好となる可能性もなくはない。ここはもう、スプリントばりのバトルが繰り広げられるのは必至である。

 余談ながら、#62 RC350にF3でチャンピオンを決めたばかりの山下健太の名がないが、これはマカオGP参戦に向けてヨーロッパで同日テストを行っているため。その影響も少々気になるところではある。

 なお、気になる週末の天気だが、この原稿執筆時点での予報ではドライの模様。しかしながら、最高気温で20度に達するか、達しないかというところなので、暖かい服装でサーキットを訪れることをお勧めしたい。

 

(はた☆なおゆき)

  • YOKOHAMA
  • D'STATION
  • Y's distraction
  • MAZDA
  • ENDLESS
  • GTNET
  • WORK
  • CUSCO
  • 日産・自動車大学校
  • 王子サーモン
  • フクダ電子
  • 株式会社大和ラヂエーター製作所
  • Swisstrax
  • NAPAC
  • GAZOO Racing
  • NISMO
  • BRIDE
  • swift
  • enable
  • vivaC
  • TECHNO FIRST
  • ings
  • Super Taikyu SERIES.
  • S.T.O
  • Super Taikyu SERIES.