第4戦プレビュー
15年ぶりの長丁場となった富士ラウンド
富士スピードウェイのスーパー耐久は、そのルーツであるN1耐久、さらに言えばプレシリーズの「量産ツーリングカーフェスティバル」の頃から開催されており、90年から始まっている。途中、富士は大改修が行われていた時期もあるため04年のみ開催されず、23回目となるが、それでも歴史の重みは十分感じられるはずだ。ちなみに現在のSUPER TECというレース名称に改められたのが、99年のこと。
また90年から6時間耐久としてレースが行われていたが、98年から4時間耐久に改められ、今年の7時間耐久というのは、それ以来の変更ということになる。ところで、スーパー耐久の長い歴史においては、7時間は最長ではない。
十勝スピードウェイでは94年から08年まで、実に15年間に渡って24時間レースが開催されていた。また、N1耐久のルーツともされる、筑波ナイター耐久は9時間耐久で、その後12時間耐久に改められている。しかし、十勝24時間レースが開催されないようになって、もう5年。懐かしく思う方もいるだろうし、またやってほしいという声も多く聞かれる一方で、日本で24時間レースが開催されていたことを知らない、若いドライバーもきっといるのでは? そろそろ改めて、長い歴史を編纂しなければならない必要もあるのかもしれない。
さて、この長丁場のレースに対し、前回のもてぎ大会から「3時間を超えるレースには、3回のピットストップが義務づけられる」というブルテンが発行されたが、今回はさらに「4回」という項目がつけ加えられている。 7時間で3ピット、すなわち4スティントだと、勝負をかけると最低でも1時間45分走らなくてはならず、現実的にはGT3クラス、ST-2クラスまでは不可能。ST-3クラスが微妙なところで、タンク容量の小さいST-5クラスも難しいのでは? だが、4ストップ/5スティントに改められれば、最低が1時間24分となり、一挙に現実味を帯びる。これは好判断ではないだろうか。
まして8月の夏真っただ中、「行け!」と言われれば、行ってしまうのがドライバーの本能であるものの、猛暑を相手にしなければいけないことを思うと、正直言って無理は禁物。「甘い」と思わず、それでアクシデントに遭遇したら……というのを肝に命じてほしいところではある。
GT3クラスのダークホースとなるか、#3 ENDLESS ADVAN PORSCHE!
ポルシェ本来のエンジンパフォーマンスが、富士のストレートで炸裂する
GT3クラスでは、第2戦を連勝した#28 PETRONAS SYNTIUM SLS AMG GT3と、第3戦で劇的な逆転勝利の#1 PETRONAS SYNTIUM SLS AMG GT3が、奇しくも同ポイントでトップに並んでいる。第3戦は序盤に#81 GTNET ADVAN NISSAN GT-R、続いて#3 ENDLESS ADVAN PORSCHEがトップを走るも、中盤以降は昨年のレースの多くで見られたように、いつの間にかPETRONAS SYNTIUM TEAMの2台がフォーメイションを組んでいた。しかし、まさかラスト5分でトップが入れ替わろうとは……。
28号車のブレーキは限界に達し、ジョノ・レスタ選手は無線でそれを伝えていたという。対するピットからの指示は、「もうペースを抑えても大丈夫」。30秒もリードがあって、残り5分ということは、走れてせいぜい3周。10秒落としても良かったものの、それをしなかったのは、明らかなミスとチームも厳しく指摘していたもの。ゴール後、レスタ選手がどれだけ落ち込んでいたことか……。汚名返上なるか、それが今回のレスタ選手のテーマだろう。
予選で最速だったのは、開幕戦に続いて#24 スリーボンド日産自動車大学校GT-Rをドライブする千代勝正選手。「自分でもビックリしました」と言うほどのタイムを叩き出し、今回も期待がかかるものの、前回のレースの後、「佐々木大樹選手と2戦ずつの契約なので、どうなるか……」と千代選手。昨年のF3-Nクラスチャンピオンである佐々木選手の走りも見たいだけに、Dドライバーとして登録され、ふたりとも走ってほしいものだ。
今回ダークホースとなりそうな予感がするのは、#3 ENDLESS ADVAN PORSCHE。実はこのクルマ、12年のBOPで戦っているため、ストレートは決して遅くない。前回も峰尾恭輔選手が序盤にトップを走り、また今回はDドライバーとして山内英輝選手が加わるだけに、戦力アップは確実。大暴れが期待できそうだ。
連勝なるか、#59 STURM MOTUL EDインプレッサ
ST-3クラスでは#77 B-MAX Z33に期待、開幕戦・幻のPPからの逆襲に
前回のST-1クラスは、#9 Faust Racing BMW Z4の圧勝に。ライバルの#51 DIAMANGO BMW Z4がピットスタートを強いられた上に、エンジンが本調子でなかったという理由も実のところあった。しかし、今回はDドライバーとして池田大祐選手が加わり、余郷敦選手、坂本祐也選手とともに石原将光選手をサポートするため、互角の戦いが繰り広げるられるのは必至。しかし、対する#9 Faust Racing BMW Z4も、牽引役の山野直也選手が86/BRZレースで2連勝と、その勢いは侮りがたい。
ST-2クラスではGVBインプレッサが初優勝。#59 STURM MOTUL EDインプレッサをドライブする大澤学選手、吉田寿博選手、松田晃司選手が表彰台の上でとびっきりの笑顔を見せていた。東和インテックレーシングとしては結成10年目の初勝利。長らくランサー勢の連勝を許し、なおかつ熱狂的なファンを持つスバル車だけあって、大いに喜んだ人たちも多いのでは。バトルを繰り広げた#20 RSオガワADVANランサーの阪口良平選手によれば、「インプレッサはストレートが速い。ランサーはブレーキで詰められるけど、もてぎではブレーキが厳しいから、あんまり無理はできなかった」という。
それでも#20 RSオガワADVANランサーはいったん前に出るも、なんと最初のピットストップでセルモーターに異常が。熱のため、作動しなくなってしまう。これで遅れを取り、易々と#59 STURM MOTUL EDインプレッサの独走を許す格好となったものの、同じようなトラブルを繰り返すはずもない。今回は最後までバトルが続くことを期待しよう。
ST-3クラスで緊急事態は、#34 assetテクノZ34。前回、バックマーカーとの接触でクラッシュしてしまったが、ダメージは思いのほか酷く、フレームにまで及んでいたという。この短いインターバルゆえ、修復なるか……というのが関係者の声。今頃、懸命の修復作業が行われていることだろうが、走れれば何が何でも、このチームは勝ちに来る。Cドライバーに安田裕信選手を加えているだけに、普段のレース以上に言い訳は無用。
6クラス中で唯一、韓国での連勝と併せ、無敗の快進撃を続けているのが#80PETRONAS TWS GS350。昨年も1勝を挙げているが、熟成が進んだ今年は決勝レースに強い、という印象も十分。むしろ速さでは#38 TRACY SPORTS IS350の方が上回っている感も強いが、前回はエンジントラブルで無念のリタイア。あの速さを最後まで維持できれば、ST-3クラスのバトルはさらに盛り上がること必至である。
盛り上がるといえば、#77 B-MAX Z33。今年はスポットでの参戦となるが、忘れられないのが幻に終わりはしたものの、開幕戦でポールを奪ったこと。さすが関口雄飛選手、と皆を唸らせたものだ。今回はしかも、Cドライバーとして高星明誠選手が加わる。F3-Nクラスのチャンピオンに王手をかけた、スピードボーイがスーパー耐久初挑戦。どんな適性を見せてくれるのか。それ次第で、来年のシートにも何らかの影響があるかもしれない。
S2000とフィットの逆襲に期待
前回のもてぎで、我慢を強いられた分、必ず富士で!
ST-4クラスも前回は、最後にすごい見せ場があった。#41 TRACY SPORTS ings S2000の筒井克彦選手を、#58 ウインマックスTEINワコーズKRP☆DC5の関豊選手が激しく追いつめ……。30秒近かった差を徐々に詰め、ラスト2分で逆転! これはもう関選手の頑張りと、ワンチャンスを逃さなかった執念の賜物だった。
あまり知られていないが、今では自由にローターやキャリパーの交換が許されるものの、S2000に関してはそれが2シーターのハンデとして、認められていない。ストップ&ゴーが繰り返されるもてぎでは、ブレーキの負担が大きく、S2000は圧倒的に不利。それを覆して2位になったのは、むしろ見事とさえ言うべきか。その陰には助っ人として加わった、井入宏之選手の激走があったことは欠かせない。また、3位の#95 リジカラS2000にも前回、久々のレースとなる光貞秀俊選手の力が光っていた。このふたり今回も出るとあって、またいい仕事をしてくれることを期待したい。
ST-5クラスでは、本来速さに定評のある#19 BRP☆HYPER ECU C72制動屋J’Sフィットの存在が、前回は正直なところ目立たなかった感は否めず。というのも、予選を前に虎の子エンジンにトラブルが生じ、以降スペアエンジンで走らざるを得なかったからだ。むしろ#36 エンドレスアドバントラストヴィッツが、お株を奪ったかのように我慢を一切せず、速さを5時間披露し続けていた。最後に予定外の給油をしたが、そのロスがあっても、後続を寄せつけなかったのだから、完全勝利と言っても過言ではないだろう。
また、この2台による激しいバトルにそろそろ割って入りそうなのが、#17 DIXCELアラゴスタNOPROデミオ。助っ人の谷川達也選手がAドライバー予選でトップに立ったのは少なからぬ衝撃だったが、熟成も確実に進んで、もはや勝ちに行けるクルマとなったのは明らか。前回はブレーキトラブルに見舞われ、7位に終わったが、対策も施されているであろう今回は、必ず期待の一台になるはずだ。
最後に、観戦される方には、熱中症対策は万全に。「こんなに……」と思うぐらいの準備を是非お願いします。雨でも降らない限り、30度オーバーは確実! むしろ7時間にも及ぶ長丁場だけに、のんびりと観戦してほしいものです。ちょっと目を離した隙の順位変動の理由も、必ず当欄でお伝えしますので!
(はた☆なおゆき)