SUPER TAIKYU

RACES ARCHIVE 2013

REPORT

第5戦プレビュー

46年ぶりだったマツダのレシプロエンジン搭載車の勝利!

 前回の富士ラウンドにおいて、ST-5クラスで#17 DIXCELアラゴスタNOPROデミオが初優勝を挙げたが、ふと気がついた。マツダのロータリーエンジンは、RX-7などでさまざまなレースに勝っているが、レシプロエンジンでの勝利は……と。ワンメイクレースならいざ知らず、複数の車種によって争われるレースで、過去に勝ったことがあるのだろうか。正直なところ、筆者の記憶にはなかったため、レース史家として名だたる林信次氏に問い合わせてみた。すると、次のような回答が。

「67年8月20日の全日本スポーツカーレース富士大会の全日本ツーリングカーレース/T-Ⅰクラス (左回り)で、大橋孝至選手のファミリア1000クーペが勝っていますね。オート東京時代の優勝はこれだけだと思う。鈴鹿の西コースに碧南マツダの田中梅夫さん(中嶋悟の恩師)がやっぱりファミリアクーペで一台だけ頑張っていたが、2位が最高位だったみたい。ということは、46年ぶりの快挙かな。なので、初めて、ではないです」

 実に46年ぶりと! どおりで記憶にないわけだ。もちろん、そのことはマツダのレシプロエンジンの性能云々ではなく、レースにおいてはよりロータリーエンジンに力を入れてきたということ。そのロータリーエンジンも今は生産が休止されており、これからはレシプロエンジンで新たな歴史が刻まれていくのだろう。なお、これまで唯一の勝利はスプリントレースで挙げられているため、耐久レースにおける勝利はデミオが初めてということになる。

藤井誠暢、3年連続優勝を飾って、岡山マイスターを名乗れるか?
STURM MOTUL EDインプレッサは、もちろん3連勝を狙う

 ここ2戦ほど5時間、7時間という長丁場のレースが続き、その前も第1戦は中止、第2戦は1時間の2ヒートだったこともあり、岡山大会は今年初めての3時間レースとして開催される。したがってドライバー交代を伴うピットストップは、2回が義務づけに。ドラマには期待したいものの、決勝当日はもう9月とあって、少しは気候的に落ち着いているだろうから、極端な波乱の展開はないことを望みたい。なお、今回はスポット参戦の7台を含み、総エントリー49台で争われる。

 岡山国際サーキットでの3時間レースにおいて、昨年は103周、そして一昨年は105周、総合優勝を飾ったチームが、それだけの走破を成し遂げている。今年もコンディションに恵まれたならば、105周以上になるのはまず間違いない。GT3クラスのエントリーも今や8台にまで増え、レベルもバトルも激しくなっているからだ。このクラスにおいて、岡山で勝率100%のドライバーが、今年も#24スリーボンド日産自動車大学校GT-Rを駆る藤井誠暢である。

 ただし……とつけ加えるのは不躾かもしれないが、11年のST-Xクラスは1台のみ。そして、昨年もチャンピオンチームの#1/#28 PETRONAS SYNTIUM SLS AMG GT3が出場していなかった。チームの本拠、マレーシア・セパンサーキットでのレースを優先し、かつ昨年のみ選択制となっていたためだ。だが、今年はフルエントリーで、もし3年連続優勝を飾れたなら、胸を張って「岡山マイスター」を藤井は名乗っていいだろう。可能性は十分ある。今年はまだ勝ちがないとはいえ、ポールポジションは前回獲得、また単独での最速タイムは中止になった第1戦も含み、3回も記録して速さは十分あるからだ。そして、3時間レースに戻った上に、今回からプラチナドライバーの乗車が1/3から40%に改められ、12分多く走れることになった。もちろん、どのチームにも共通するが、これで戦術の幅も広げられるからだ。

 今年、その#24 スリーボンド日産自動車大学校GT-Rだけでなく、#81 GTNET ADVAN NISSAN GT-Rも含め、速さではGT-Rが他を圧している感は強いが、これを燃費の良さ、そして戦術でカバーして連勝を飾っているのが、#1 PETRONAS SYNTIUM SLS AMG GT3。特に前回はプラチナドライバー、谷口信輝の投入タイミングがどんぴしゃり。得意のセミウェット路面にスリックタイヤで、谷口は大量のリードを奪ったからだ。その谷口の交代直後に雨が強くなり、予定外のピットストップを行ってもまた余裕も。速さが優るのか、強さが優るのか、今年初めての3時間レースだけに、気になるところだ。

 そして、ST-1クラスだが、今回は#51 DIAMANGO BMW Z4が欠場、#9 Faust Racing BMW Z4の孤軍奮闘となってしまう。完走さえすれば、20ポイントが手に入るものの、手堅く走るのではなく、昨年も優勝を飾った100周越えに期待したい。

 ST-2クラスでは、4連覇を狙う#20 RSオガワADVANランサーが、2戦連続セルモータートラブルで敗れる波乱が。前回の富士大会の前に対策はしていたのだが、それだけ暑さが厳しかったということなのだろう。その間に連勝を飾っているのが、#59 STURM MOTUL EDインプレッサ。「何かトラブルが起こっても、直して絶対に完走したい」という吉田寿博の言葉とは裏腹に、ライバルの方にトラブルが起こって、自分たちがトラブルフリー。エンジンのピックアップに優れ、それほど無理せずともラップタイムを刻んで走れることが勝因になっているのだろう。

 もちろん、#20 RSオガワADVANランサーも、もう負けるわけにはいかない。少しでも涼しくなれば、件のセルモーターに対する負担も減るだろう。今回は是非とも死闘を繰り広げてほしいもの。

土つかずの快進撃は、どこまで続くかPETRONAS TWS GS350
毎回ウィナーが変わるST-5クラス、新たな勝ち名乗りは?

 予選における一発の速さこそないものの、とにかく決勝レースでの強さが目立つのが、ST-3クラスの#80 PETRONAS TWS GS350だ。第2戦・インジェの連勝も含め、ここまでのレースは負け知らず。前回はオープニングラップのうちに吉本大樹がトップに立ち、これが最大の勝因に。序盤のセーフティカーランにもあえてステイアウト、これが功を奏して後続に大量のリードを奪うなど、戦略の妙にも長けているが、運にも恵まれているのも事実だ。

 これに対して、運がないのが#34 assetテクノZ34である。第3戦・もてぎでは接触によってクラッシュ。予想以上のダメージを必死に直し、速さでは他を上回っていた印象も前回のレースではあったのだが……。終盤の激しい追い上げも、タイヤが遺物を拾って予定外のタイヤ交換を強いられ、万事休すという具合に。このまま#80 PETRONAS TWS GS350の独走を許してたまるかと、最も強く思っているのがこのチーム。岡山の走り込みには自信を持っているだけに、逆襲の期待がかかる。

 なお、今回スポットで、#85 85TERANISHI 34Zが出場する。操るのは昨年までFCJを戦い、今年から活動の場を移したスーパーFJ岡山シリーズで3連勝中の山田真之亮、そしてその師匠格で、元F3ドライバーの小早川済瑠だ。久々のレース出場となる小早川は「マズいのは、僕の腕が鈍っていること(笑)」と語っていたが、当時からクレバーで器用な走りを身上としていただけに、きっと本番までにはコンディションを整えてくるはずだ。

 また、昨年のチャンピオンチーム、#14岡部自動車KYOSHIN計測Z33がいよいよ本領を発揮し始めた。前述のSCラン中のピットストップが尾を引いた格好ながら、予選ではトップに立って貴重な1ポイントをゲット。RX-7からZに乗り換え、もはや違和感はなさそうだ。

 ST-4クラスでは第2戦の第1レースを制して以来、高得点を重ね続けている#41 TRACY SPORTS ings S2000が前回も勝利を重ねて、ランキングのトップを不動のものとしつつある。今回も勝てば、だめ押しも可能か? Cドライバーはこの原稿執筆時ではTBNとあるが、第3戦で初優勝を飾っている#58ウインマックスTEINワコーズKRP☆DC5には、すでに強力なCドライバーの登録が明らかに。それがベテラン木下淳! 怖いドライバーが#41 TRACY SPORTS ings S2000の前に立ちはだかる。

 なお、ST-4クラスには前回に引き続き#88村上モータースACREロードスターが、そして#10 Provare☆147GTAcupが久々にスポット参戦。トヨタ86やアバルトを加え、7車種も揃うなど、ホンダ車の一辺倒だった時代には考えもしなかったこと。車種のバラエティに富むクラスという点では、かつてのST-3クラスのお株を奪ってしまったようでもある。

 そして、ST-5クラスでは3戦終えて、ウィナーが3チーム誕生。冒頭にも挙げた#17 DIXCELアラゴスタNOPROデミオが、前回は初の勝ち名乗りを挙げている。ポイントの上では、#19 BRP☆HYPER ECU C72制動屋J’Sフィットが一歩リードながら、これは上位陣で唯一第2戦に出場、今年は第2戦以降の6戦中5戦の有効ポイントシステムなので、#36 エンドレスアドバントラストヴィッツを含めた、三つ巴状態であると思ってもらっても差し支えないだろう。今回は果たして4チーム目のウィナーは誕生するのか。いや、むしろ2勝目を挙げて残りのレースを有利に戦うようになるチームが現れる、そんな予感の方が強く漂っている。

 最後に、今回は予選方式に若干の変更があり、従来は1セッションの計測時間が15分だったのに対し、18分に改められ、インターバルも10分から13分に変更。その分、余裕もできるわけだが、どういう影響を及ぼすのか気になるところでもある。

 

(はた☆なおゆき)

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