決勝レポート
#3 ENDLESS ADVAN BMWが夏の富士で、大逆転優勝飾る!
全6戦で争われるスーパー耐久シリーズは、ここからシリーズ中盤戦に突入。第3戦の決勝レースが、静岡県の富士スピードウェイを舞台に、7月27日(日)に7時間レースとして行われた。優勝を飾ったのは、峰尾恭輔/YUKE TANIGUCHI/飯田章組の#3 ENDLESS ADVAN BMW。予選4番手からの大逆転勝利ともなっていた。
#81 GTNET ADVAN NISSAN GT-Rを、まさかのトラブルが襲う……
日曜日の早朝8時30分からフリー走行が行われ、ここで総合トップタイムをマークしたのは、星野一樹/尾本直史/青木孝行組の#81 GTNET ADVAN NISSAN GT-Rだった。ここまで星野は全セッションでトップに立っていたこともあり、決勝に向けても絶好調ぶりを強くアピールしていたものだ。
決勝レースのスタートを前にして、55台ものマシンが並んだグリッドは、まさに壮観そのもの! ただし、サーキットの上空には雨雲ではないとされながら、薄い雲が覆っており、レース中に雨が降らない可能性は皆無とは言い難かった。ともあれ、レースが荒れに荒れないことを、誰もが祈っていたものだ。そして、11時に7時間にも及ぶ長き戦いがスタート。先陣を切って1コーナーに飛び込んだのは、もちろん#81 GTNET ADVAN NISSAN GT-Rの青木で、これに#24スリーボンド日産自動車大学校GT-Rの藤井誠暢だけが食らいついていく。だが、その藤井も2周目を終えると、徐々に遅れを取るようになり、逆に迫ってきたのが#3 ENDLESS ADVAN BMWの峰尾恭輔だった。勢いに乗る峰尾は12周目に藤井をかわし、2番手に躍り出る。
だが、それから2周後に峰尾はスピン! 何やら不自然な姿勢で乱れていたのは、練習中から意地悪をしていた制御系の問題のよう。なんとか後続車両の接触は免れたものの、4番手に後退してしまう。ともすれば、その後プレッシャーをかけられたかもしれないライバルの後退で、一気に楽になった青木はアクセルを踏み抑えることなく、40秒以上のマージンを築いた44周目に、星野へとバトンタッチ。もちろん、その星野もマージンをより稼いで、88周目、尾本に交代した。
その後はピットストップのタイミングの違いもあり、激しい追い上げを見せた、#3 ENDLESS ADVAN BMWにトップを譲った#81 GTNET ADVAN NISSAN GT-Rながら、終盤の大逆転は、時間の問題だと思われた。ところが、星野がコースに再び戻って10周後の179周目、衝撃的な後継が飛び込んでくる。予定外のピットストップを強いられたばかりか、ガレージの中にマシンはおさめられてしまったのだ。原因はパドルシフトのトラブル……。何とか修復はなったが、これで勝負権を失ってしまった#81 GTNET ADVAN NISSAN GT-Rを尻目に、TANIGUCHIは大量のリードを得たこともあり、慎重な走りで逃げ切りに成功。7時間で233周の走破を果たした#3 ENDLESS ADVAN BMWが優勝を飾ることとなった。
ST-1クラスのサバイバルゲームは、#37 KeePer I.P.Sが制す!
ST-1クラスは、まさにサバイバルゲームのような様相を呈していた。まず、3連勝を狙った#9 Faust Racing BMW Z4が、わずか20周にしてフライバイワイヤーのモーターが損傷し、コース脇にストップ。序盤のリーダーは#51 Diamango BMW Z4の坂本祐也だったが、石原将光への交代後、#37 KeePer I.P.Sの平川亮が逆転を果たす。#51 Diamango BMW Z4は遅れを取りながらも、虎視眈々と逆転の機会をうかがうも、間もなく5時間目を迎えようという時に、左リヤのハブにトラブルを抱え、無念のリタイアを喫することに。これで敵のいなくなった#37 KeePer I.P.Sはピットで畠中修が見守る中、平川と中山雄一が力走を見せて、嬉しい初優勝を飾ることとなった。長い修復は強いられたものの、#9 Faust Racing BMW Z4はしっかり完走を果たし、ポイントリーダーの座を守り抜いた。
ST-2クラスでも連勝がストップした。大澤学/吉田寿博/松田晃司組の#59 STURM MOTUL EDインプレッサは、スタートで出遅れたばかりか、ピットロードの速度違反とピット作業違反のペナルティとして、二度もドライビングスルーを科せられたばかりか、5時間過ぎに左フロントタイヤにトラブルが生じ、完全に勝負権を失ってしまう。そんな強敵のアクシデントを尻目に、幸運の女神に微笑まれたのは、大橋正澄/阪口良平/花岡翔太組の#20 RSオガワADVANランサーだった。序盤は阪口が#6新菱オートDIXCELエボIXの菊地靖と激しいバトルを繰り広げるも、しばらくは逆転を許されず。しかし、我慢が実ってレース折り返しの頃には、再びステアリングを握った阪口が、待望のトップに浮上。そのまま逃げ切って今季初優勝を飾った。2位は菊地と冨桝朋広の駆る#6新菱オートDIXCELエボIXが獲得。
ルーキーのペナルティも帳消しに。#35 asset ings Z34が3連勝を飾る!
終わってみれば、前嶋秀司/佐々木雅弘/廣川和希/安田裕信組の#35 asset ings Z34が、ただ一台214周もの走破に成功、しかも松原怜史/藤波清斗/大西隆生組の#34 asset ings Z34とのワンツーフィニッシュとあって、シナリオどおり完璧なレース展開だったと、結果だけ見れば、誰もがそう思うだろう。実際、スタートから佐々木が逃げて、セカンドスティントを担当した廣川も、これが初めての決勝での走行とは思えぬほど安定した走りを見せたからだ。ところが、その廣川が交代直前に黄旗区間での追い越しをしてしまい、代わった直後の前嶋が、20秒ストップのペナルティを科せられてしまう。
トップを#34 asset ings Z34の松原に、そして#14岡部自動車サントラント195マイカーズの山崎学にも先行を許し、ギャップが30秒にもなってしまった前嶋。しかし、これで諦めるはずもなく、着実に2台に迫っていく。ブレーキに不調を抱えた山崎を20周かけて抜き去ると、それから4周後の119周目には、ついにトップに返り咲くことに。続いて走行した佐々木が、よりマージンを広げたこともあって、最終スティントを担当した安田はクールスーツなしで走行の余裕さえ見せ、見事開幕3連勝を果たすこととなった。
ST-4クラスでは、植松忠雄/藤田竜樹/寺西玲央/佐々木孝太組の#41 UEMATSU×TRACY SPORTS ings S2000が圧勝。スタートを担当した佐々木が、一時はトップを譲ったものの、わずか5周で取り戻してからは差を広げることに。これに唯一対抗できたのが、蒲生尚弥/井口卓人/影山正彦組の#86 GAZOO Racing SPIRIT 86だった。直線では引けを取るも、燃費に優れるメリットを生かし、スタート担当の井口が65周、実に2時間13分も走り続けて、トップに躍り出たのだ。しかし、蒲生に代わった後、再び#41 UEMATSU×TRACY SPORTS ings S2000が立ち、植松〜寺西〜藤田のリレーも完璧に決めて後続を寄せつけず。それでも#86 GAZOO Racing SPIRIT 86が、意地の2位をもぎ取っている。
序盤のST-5クラスで大いに盛り上がりを見せたのが、#99 BRP★J’S RACINGフィット3と#2ホンダカーズ野崎with BOMEXによる、激しいつば競り合いだった。大野尊久と山田英二の意地と意地がぶつかり合い、何度も順位を入れ替える。だが、この2台が最初のドライバー交代を終えると、トップに立っていたのは#95リジカラFIT3。そのまま逃げ続けて、3戦連続でトップチェッカーを受けた。
しかし、レース後に抗議が提出されたものの、結果は暫定に留め置かれることに。詳細と優勝コメントは、改めて報告させていただくこととする。
心配された雨も、結局最後まで降らず、コンディションがキープされたままレースは終了。次回のレースは9月6〜7日に、岡山国際サーキットで開催される。
総合優勝:(ST-Xクラス優勝)#3 ENDLESS ADVAN BMW
峰尾恭輔
「ずっと勝てなかったので、やっと勝てて嬉しいです。序盤のスピンですか? あれはトラブルなんで、僕のミスじゃなく、何かあったからみたいなんで(笑)。それでも遅れを取り返すしかないので、一生懸命走りました。実はレース前にお祓いをしてきたんですが、それがめちゃくちゃ効いたようです。残り3戦も諦めないで、また優勝したいと思います」
飯田章
「今日は峰尾選手が非常に頑張ってくれて、本人いわく『俺ひとりで勝ったようなもんだ』って言っていましたが、はい。こんなレースもあるんだな、と思いました。自力じゃ勝つのは厳しかったので。これからも楽しくレースができて、みんながハッピーならばいいんじゃないかなと思います」
YUKE TANIGUCHI
「いや〜、最後まで走れて良かった。ちょっとクルマも完全な状態じゃない中、チームも頑張って、このふたりもすごくいい走りで。僕はクルマを壊さないように、最後ゴールできて良かったです。今後もこのふたりに、またたくさん乗ってもらう形になるんですが、頑張ってチャンピオンを目指していきたいと思います」
総合3位:(ST-1クラス優勝)#37 KeePer I.P.S
中山雄一
「予選2番手からのスタートも、51号車にけっこう離されてしまって……。それでもトラブルはなく、インタープロトとしてはいいペースで走れていたと思います。そこから平川にバトンタッチしたところで、トップに上がることができたので、すごくこの流れは良かったです。インタープロトはコーナーに強いので、直線が長い富士で優勝できたのは、シーズンを考えたら、すごくいいことだと。次の岡山はコーナーが多いですし、よりインタープロトが速く走れるんじゃないかと思います。この調子を維持して次回も優勝を狙っていきたいです」
平川亮
「僕にまわってきてトップに、自分で抜いて立てたので、その後はずっとプッシュして。クルマは壊れないという自信がありましたし、毎周限界までプッシュして、その結果優勝という形になったので、すごく嬉しいです。今回、優勝して流れが来ているんで、次の岡山と鈴鹿に向けて、さっき言ったとおり岡山はコーナリングが多くて、僕らのクルマが強いはずだから、また優勝目指して頑張ります」
畠中修
「本当にふたりがいいペースで走っていたので、今回は何が何でも優勝が欲しかったので、良かったです。私も走りたかったですが、ふたりの力強い走りを楽しめました。次回はぜひ、チェッカーを受けたいと思います」
総合5位:(ST-2クラス優勝)#20 RSオガワADVANランサー
阪口良平
「7時間の長丁場だったんですが、みんなノーミスで。クルマも何にもトラブルなかったんで、本当に、まだまだ行けるって言ったらおかしいですけど、何の不安感もなく走れました。チームの皆さん、あとチームのふたりに感謝しています。やっぱり、すごく熟成されたクルマなんで、乗りやすいんですよね、エボIXは。とはいえ、可能性のある新しいクルマで、ライバルのクルマより前に行きたいんで、チームの皆さんと可能性を見出して、チャレンジしたいと思います」
大橋正澄
「今回、クルマも噴火しなかったし、調子良かったんで、安心していけました。エボIXはさんざん使い倒してきたクルマので、エンジンも今回はフレッシュにしてもらって、安心していけたんで、本当に良かったです、久々なんで優勝が嬉しいです」
花岡翔太
「すごく緊張しました。緊張し過ぎて、からだがバキバキです、運動不足ではなくて(笑)。いつも使わない緊張感を使ってしまったので、ちょっとヘロヘロです。せっかく誘ってもらったので、今回はいい結果になって良かったです」
総合7位:(ST-3クラス優勝)#35 asset ings Z34
前嶋秀司
「とりあえず3連勝できたんで、本当にすごく嬉しいですね。でも、こいつ(廣川)がやらかしてくれて(笑)。いいペースで走っていたから、帰ってきたら褒めてやろうと思っていたんだけど、最後の最後でやらかして、もうねぇ! 追いつくしかないでしょう、頑張りましたよ。その分、いいトコたぶん撮ってもらえて良かったです。次も頑張りますよ」
廣川和希
「佐々木さんが見事にスタートを決めてくださって、せっかくトップで渡してくれたのに、ちょっと自分のくだらないミスで、20秒ペナルティを食らってしまって。本当に申し訳ない限りなんですけど、なんとか前嶋さんに取り返していただいて、その後、佐々木さんにもリードをまた築いてもらえました。ふたりに助けてもらえてなんとかここに来られたと思っていますので、本当に感謝しています。もっと勉強します!」
佐々木雅弘
「まぁ、ビックリしましたよね、マジで。それにしても今週は予選も決勝も、前嶋デーかなと。なんか、おいしいところ、全部持っていっちゃって(笑)。長くコンビ組んでいるから、ペナルティの分も返してくれるだろうな、と思っていたけど、あんなに早く20秒返してくれるとは! 最後の安田選手までうまく渡すことができて良かったです」
安田裕信
「途中、ペナルティ受けた時は、今回ヤバいから乗らんとこ、と思って(笑)。まぁ、佐々木さんが30秒マージン作ったら乗りますわ、って言ったら、本当に40秒ぐらい作ってくれて。まぁ最後は接触なしに走ったぐらいですわ。鈴鹿1000kmのトレーニングで、クールスーツなしで行ったから、最後暑かった。それぐらい!」
総合15位:(ST-4クラス優勝)#41 UEMATSU×TRACY SPORTS ings S2000
佐々木孝太
「僕は今回、助っ人で呼んでいただいたんですけど、呼んでもらったからには勝たなくちゃいけないし、それを任されていると思っていたので、本当に勝てて良かったです。でも、強いチームだったので、僕がやったことはちょっとしたことだったので、楽チンさせてもらいました。ちょっと一瞬抜かれちゃったんですけど、ペースを取り戻して、後ろをいい感じで引き離していけたので、あとはそのマージンをみんな、引き継いでくれたので、すごくいい内容でした」
植松忠雄
「底力のあるチームなので、本来はここらへんにいつもいなくちゃいけないんですが、前回は損してしまったんで、ここから巻き返して、チャンピオンを獲れるように頑張っていきます。強烈な助っ人と、強力な相方と一緒に、これから連続して表彰台に立っていきたいと思います」
藤田竜樹
「僕のスティントまでに、けっこう安定してつないでいただいたので、ライバルのタイムとか見て、こちらで調整して。結果として、さっき植松さんが言ったように、底力のあるチームなのは間違いないので、安定して今日は結果を持って帰れて、一安心しています。途中、思惑の違いで、ちょっとドキドキもしてたりしていたんですが。結果としてはチーム全体で築いたマージンっていうのが、最後にこういう形で実を結んで、良かったと思います」
寺西玲央
「表彰台のいちばん高いところは、初めてです。本当に先輩方に恵まれたので、僕は先輩方にしがみついていくだけだったので、本当に今日はいい思いをさせてもらったというか、優勝させてもらったと言う気持ちなので、もっともっと僕が力をつけて、チームに貢献できるように、この先頑張っていきたいと思います」
(はた☆なおゆき)