決勝レポート Group.1 (ST-X / ST-1 / ST-2 / ST-3)
GTNET ADVAN NISSAN GT-Rが大激戦の末に、2連勝を飾る
鈴鹿サーキットを舞台とするスーパー耐久シリーズ第5戦はグループをふたつに分けて開催され、ST-X、ST-1、ST-2、ST-3クラスによるグループ1の決勝レースが、10月26日(日)に行われた。140分間をいかに使うか、クラスごと、チームごとに分かれたこともあり、レースは予想以上に白熱。トップでチェッカーを受けたのは、#81 GTNET ADVAN NISSAN GT-Rの星野一樹/尾本直史/青木孝行組で、2連勝を飾ってランキングのトップも死守することとなった。
先輩の気迫に負けた? スリーボンド日産自動車大学校GT-Rはトップ死守ならず
91年以来となる2レース開催、最初のグループ2(ST-4、ST-5クラス)決勝レースは随所で激しいバトルが繰り広げられ、大いに盛り上がりを見せることになった。後方から速い車両に抜かれる、譲るリスクが極端に減ったことでドライバーからは、このレーススタイルは好評。グループ1では抜いて行くリスクも減ることで、引き続き見応えのあるレースとなることが期待された。
早朝8時30分から30分に渡ってグループ1もフリー走行が行われ、ポイントリーダーで#81 GTNET ADVAN NISSAN GT-Rを駆る星野一樹/尾本直史/青木孝行組は2分3秒831で、3番手に。トップは#24 スリーボンド日産自動車大学校GT-Rの藤井誠暢/GAMISAN/高星明誠組で、3秒521をマーク。2番手は#3 ENDLESS ADVAN BMWの峰尾恭輔/YUKE TANIGUCHI/飯田章組で3秒831と、3台のタイムは均衡していた。
ポールポジションからスタートした#81 GTNET ADVAN NISSAN GT-Rの尾本に、さっそく襲いかかったのが#24 スリーボンド日産自動車大学校GT-Rの藤井だった。1コーナーまでに#3 ENDLESS ADVAN BMWの峰尾をかわしたばかりか、オープニングラップのS字でトップに浮上。そのまま逃げ続けて藤井はプラチナドライバーに許された制限時間を有効に使い、53分間・25周で26秒のリードを築き上げて、GAMISANにバトルを託した。
そのGAMISANもトップをしっかり守り抜き、43周目に高星へと交代。いったんはトップを#3 ENDLESS ADVAN BMWに譲ったものの、まだTANIGUCHIから飯田への交代を済ませていないから、やがてトップに立つのは明らかだった。そのとおり、残り30分となる50周目から#24スリーボンド日産自動車大学校GT-Rは再びトップに。その後方には15秒差で、#81 GTNET ADVAN NISSAN GT-Rの星野が続いていた。その差は次第に詰まっていき、60周目には1秒を切るまでに。GT-R GT3のドライバーであり、ニッサンの先輩でもある星野の気迫に押されてしまったのだろう、必死の抵抗を見せた高星だったが、64周目のS字でダートに足を落としてしまい、万事休す。その脇を星野が難なくすり抜けていった。この時、チェッカーまですでに5分を切っていた。
#81 GTNET ADVAN NISSAN GT-Rは、これで今季3勝目をマーク。またセカンドスティントを担当した青木にとっては、バースデイウィンともなった。
KeePer I.P.SとRSオガワADVANランサーが、最終戦に望みをつなぐ
ST-1クラスでは、ランキング2位とあって2番手からスタートした#37 KeePer I.P.Sながら、中山雄一が2周目のS字で、早くも#9 Faust Racing BMW Z4の佐藤茂をパス。そのまま逃げ続けて大量のリードを、29周目に平川亮にプレゼント。そのまま難なく逃げ切るものと思われたものの、最終スティントを再び中山に託される際に、肝を冷やす光景が。右フロントタイヤがなかなか外れなかったのだ。これでもし#9 Faust Racing BMW Z4に逆転を許せば、最終戦を待たずして2連覇が達成される。しかし、その光景を見守っていた畠中修の祈りが届いたのか、大きく差を詰められはしたものの、逆転は許さず。
これで#37 KeePer I.P.Sは3連勝を果たし、最終戦にチャンピオン獲得の権利を残すこととなった。
一方、ST-2クラスでは、スタート直後の1コーナーでまさかのハプニングが。2番手から好スタートを切った#20 RSオガワADVANランサーの阪口良平が、ポールスタートの#59 STURM MOTUL EDインプレッサの松田晃司と接触。松田は何とかクラストップに留まったものの、阪口は5番手へと後退してしまう。それぞれアライメントが狂い、ハンドリングは悪化したものの、走行不能な状態にまでは陥らずに済み、そのまま周回を重ねていく。阪口は5周目には2番手に復帰。なかなか追いつくことは許されなかったものの、射程範囲にはおさめて走行した。
その状況は、21周目に阪口から大橋正澄に、そして25周目に松田から大澤学に代わっても状況は変わらず。ただ、接触の影響で運転席側のドアが開かず、反対側から交代するハプニングはあっても瞬時の機転でロスを最小限にし、#59 STURM MOTUL EDインプレッサはトップをキープしていた。
だが、最終スティントで状況は一変する。#20 RSオガワADVANランサーには再び阪口が乗り込み、#59 STURM MOTUL EDインプレッサの吉田寿博との差を徐々に詰め始めたのだ。ブレーキングでは有利で、タイヤにも優しいランサーのメリットを生かした格好に。やがて戦いはテール・トゥ・ノーズとなり、吉田も冷静にガードするが、そこは阪口の気迫が優った。58周目のダンロップコーナーで逆転を果たすも、スプーンで吉田もアタック。まだ諦めていないことを必死にアピールした吉田だったが、次の周のS字で痛恨のオーバーランが。これで勝負は決した。この逆転劇もゴールまで6分を切った土壇場に起こっていた。
#20 RSオガワADVANランサーは、これで今季2勝目をマーク。このクラスもまた、チャンピオン決定が最終戦まで持ち越された。
#35 asset ings Z34、チャンピオンの凱旋ランならず
開幕4連勝で、すでにチャンピオンを決めている#35 asset ings Z34の前嶋秀司/佐々木雅弘/廣川和希組は、早朝のフリー走行でもトップタイムをマーク。シリーズ完全制覇を果たしてから、心から喜ぼうとしていたチームにとっては、幸先のいい滑り出しとなった。ところが、決勝レースではスタートから間もなくトラブルが。ABSが不調を来たし、ペースを思うように上げられなくなってしまったのだ。
代わって2周目からトップに立ったのは、#39 TRACY SPORTS TWS C-WEST IS350の佐藤晋也。ランキングが6位だったから、たった1周で5台を抜き、あっさりとトップに立つことに。その勢いは留まるところを知らず、やがてST-2クラスで2番手を行く#20 RSオガワADVANランサーさえ抜いてしまったほど。13周目から代わった鶴田和弥もコンスタントな走りを見せて、全車が最初のピットストップを終えた時、ドライバー交代を1周目に行った#34 asset ings Z34こそ前に置いていたが、40周目のデグナーで逆転に成功。最終スティントは再び絶好調の佐藤が乗り込み、そのまま逃げ切りを果たしたかと思われた。
ところが、喜びに浸る間もなくエアクリーナーに規定違反があり、失格の裁定が。繰り上がって優勝を飾ったのは、#14 岡部自動車サントラント195マイカーズZ33の山崎学/伊橋勲/安宅光徳組。スタートから28周を伊橋が担当、ロングスティントで一時はトップも走行。ピットタイミングの違いによって、いったんは順位を落としたものの、その後の山崎、安宅の挽回によって51周目に2番手に上がっていたことが思わぬ福音をもたらすことに。
2位は#34 asset ings Z34の大西隆生/松原怜史/藤波清斗組が獲得し、苦戦を強いられた#35 asset ings Z34は完全制覇の夢を断たれたばかりか、3位を得るのがやっとだった。
なお、最終戦はオートポリスを舞台に、今回の興奮も醒めやらぬ2週間後、11月8〜9日に開催される。今年は何とか恵まれたコンディションで、すっきりとしたレースになって残された5クラスの王座決定戦が盛り上がることを期待したい。
総合優勝:(ST-Xクラス優勝)#81 GTNET ADVAN NISSAN GT-R
尾本直史
「今回は天気が悪くなるという情報もあったので、どっちになってもいいようにと、僕がスタートで行こうということになったんです。燃料が重いのは初めてだったので、厳しかったんですが、あとを託すメンバーを信じて走りました。長く一緒にやっているメンバーと勝てたばかりか、チャンピオンにだいぶ近づいたので良かったです」
青木孝行
「今日、誕生日なんですよ! まさかのバースデー優勝。そんなの今まで、あんまり記憶にないですけど、嬉しいですね(笑)。ポイント的にはかなり楽になったけど、まだまだチャンピオンが決まったわけではないので、最終戦のオートポリスでも手を抜かずに頑張りたいと思います」
星野一樹
「いや〜、勝てて良かったです! 僕のスティントではギャップを計算しながら、最後に追いつく予定で走っていたんですが、思ったより最初のうちペースが上がらなくて……。それでも後半勝負だと分かっていたから、タイヤを残しながら攻めていって、最後に逆転できました。プレッシャーをかけながらミツ(高星)とすごくいい勝負をして、彼は若手で、僕が教えたこともあるし、いいバトルができて良かった。チームとして本当に完璧な週末が送れたと思います。この2連勝はすごくデカい! 楽はできないけど、オートポリスではいいレースができると思います」
総合4位:(ST-1クラス優勝)#37 KeePer I.P.S
中山雄一
「今回は予選がなく、ランキング順の2番手スタートだったんですが、スタートは僕が担当して早いうちにトップに立ってからは、しっかり2位とのリードを築いて平川に渡せたので、いい仕事ができたと思います。最終戦はスーパーフォーミュラと重なっていて、僕と平川は出られないんですけど、代わりにアンドレア・カルダレッリ選手とF3の山下健太選手が乗るので、そこに畠中さんも力を合わせて、チャンピオンが獲れるように頑張ってもらいたいです」
平川亮
「今回はST-4クラスやST-5クラスがいなくて、かなりクリアで走れたので、問題もなく淡々と、9号車との差を開く走りがしっかりできたと思います」
畠中修
「シリーズを何とかつなげて、最終戦に持ち込みたかったので(乗らなかったのは)いい選択だったと思います。ふたりが素晴らしい仕事をしてくれましたから、スーパーフォーミュラで頑張っている間に、私もチャンピオン目指して頑張ります」
総合6位:(ST-2クラス優勝)#20 RSオガワADVANランサー
阪口良平
「大好きな鈴鹿で勝てて本当に嬉しいです。スタートで思いのほか前に詰まっちゃったので、危機回避みたいな形でインに入って当たってしまったんですが、それは僕のミスなので1スティント終わってすぐ松田選手のところに謝りにいきました。お互いそんなにクルマにダメージがなくて良かったです。こっちはアライメントが狂っていて、右コーナーが苦しかったですが。最後はもう自分の速いところと相手の速いところが分かっているから、行くんだったらあそこと決めていたんですが、抜いた後も向こうが2コーナーで飛び出すまでは油断できませんでした。最終戦はどうなるか分かりませんが、また全力で戦うだけです」
大橋正澄
「僕は途中のスティントを、自分で守って走るだけでした。でも、前は常に見えていたんで、差が広がらないように気をつけて。縮まったと思ったら、次の周にまた広がっていたり、行ったり来たりのレースでした。見守っている方が大変で、WTCC並みに熱い、良平の走りが良かったですね」
総合8位:(ST-3クラス優勝)#14岡部自動車サントラント195マイカーズZ33
伊橋勲
「優勝できて嬉しいんですけど、表彰台に立ってもいないので、何かしっくり来ないというか……。でも、優勝は優勝ですから、しっかり喜びを噛み締めています。今回はもともと僕がスタートを担当してロングをかけて、真ん中あたりからプッシュ、プッシュと。それほど作戦を細かく立てていたわけじゃないけど、僕の後を担当した山崎、安宅も走りが安定したのが良かったんだと思います。何よりこのところ続いていたトラブルに、一切見舞われなかったのも良かったんじゃないかと。僕はこれでS耐11勝目です。本当に久々で、2010年以来になります」
山崎学
「今回のレースは現状のマシン、ドライバーのパフォーマンスをうまく引き出せたレースだと思います。スタートの混戦を上手く抜け出して伊橋選手が良いペースでラップを刻んでくれたこと、僕自身はコースに入った時からほぼクリアで走れたこと、安宅選手も良いペースで走ってくれたことが良い結果をもたらした要因だと思います。前戦の岡山も、その前の富士もトラブルがなければ十分優勝争いができていたはずという悔しさがあったので、今回の結果は何はともあれ素直に嬉しいです。次のオートポリスまではあまりインターバルがないので、勢いそのままに挑みたいと思います。目指すはチーム1-2-3です!」
安宅光徳
「先輩ふたりに支えられ、頼もしい仲間に囲まれ、今シーズン初優勝。また、私自身レース初優勝を飾る事ができました。良い週末を迎えることができて、嬉しく思います。最終戦オートポリスでは、完全優勝を目指します。ありがとうございます」
(はた☆なおゆき)