決勝レポート Group.2 (ST-4 / ST-5)
GAZOO Racing SPIRIT 86が、ホンダの聖地で今季初優勝!
スーパー耐久シリーズ第5戦は鈴鹿サーキットを舞台に、今年もWTCCことFIA世界ツーリングカー選手権と併せて行われた。今回は予選を行わず、第4戦までのランキング順にグリッドが決まり、6クラスをふたつに分けて140分間で争われることに。まずは10月25日(土)にグループ2(ST-4クラス、ST-5クラス)による決勝レースが行われ、総合優勝を#86 GAZOO Racing SPIRIT 86の蒲生尚弥/井口卓人/松井孝允組が獲得。ST-5クラスでは、#95 SPOON FIT3の松井猛敏/中島保典/荒聖治組が優勝を飾っている。
目まぐるしく入れ替わったST-4クラスのトップ
金曜日には専有走行が3セッション、1時間ずつ行われたが、今回は予選がないためか、ことさら速さを追求した感が薄く、逆に言えば決勝レースに向けたセッティングを詰めていたようだ。さらに土曜日の8時10分からも30分間のフリー走行が行われ、ここでトップタイムを記したのは、#93 SKR ENGINEERING S2000の吉本晶哉/太田侑弥組。2分22秒655を記して、これにランキングトップで、#41 UEMATSU×TRACY SPORTS ings S2000の植松忠雄/藤田竜樹/寺西玲央組が22秒690、0秒035という僅差で続いていた。
ST-5クラスでは#95 SPOON FIT3の松井猛敏/中島保典/荒聖治組が2分34秒626でトップにつけ、やはりランキングのトップ、#99 BRP★J’S RACINGフィット3の梅本淳一/奥村浩一/大野尊久が34秒805で続いていた。
ポールポジションから決勝レースに挑むのは、ランキングのトップとあって、#41 UEMATSU×TRACY SPORTS ings S2000と#99 BRP★J’S RACINGフィット3。それぞれスタートを担当したのは植松と大野だ。植松はスタートも決めてトップで1周目を終えるも、大野は痛恨のオーバーレブで早々とエンジン不調を来し、1周目のうちに#2ホンダカーズ野崎with BOMEXの山田英二、そして#95 SPOON FIT3の先行を許してしまう。それでもST-5クラスのトップ3は大きく遅れることなく、その後も激しいバトルを繰り広げる。
一方、ST-4クラスはスタート直後のトップこそ不動のままながら、後続には早々と変動が。まず1周目のうちに#86 GAZOO Racing SPIRIT 86の蒲生尚弥がふたつポジションを上げて4番手に、2周目には#333 GLORY A-ONE FN2の野間一を抜く。3周目にはトップも入れ替わり、植松を#58ウインマックスTEINワコーズKRP☆DC5の塩谷烈州が1コーナーでパス。植松はこの周のデグナーでも蒲生に抜かれていた。まさに勢いづいた塩谷と蒲生は、まだチャンピオンの権利を残しているだけに、このレースはどうしても勝ちたいところ。そんなふたりの執念が裏目に出てしまう。
シケインで2台は接触! 蒲生はスピンし、何とか踏み留まった塩谷も足まわりにダメージを負ってペースダウン。4周目に#58ウインマックスTEINワコーズKPR☆DC5はピットに戻って修復を行うも、この間に5周をロスしてしまい、完全に優勝戦線からの脱落を余儀なくされる。逆にスピンは喫したものの、蒲生の#86 GAZOO Racing SPIRIT 86の方にはそれほどダメージはなかったようで、植松と野間の先行を許すが、それでも3番手に。6周目のデグナーで抜かれた野間は、なんとスタート違反のペナルティとしてドライビングスルーを命じられる。これにより、蒲生は単独で植松を再び追いかける。実は#41 UEMATSU×TRACY SPORTS ings S2000もABSの不調で、フルブレーキングが困難な状況に陥っていた。冷静さを取り戻した蒲生は9周目のデグナーで、待望のトップに躍り出る。
31周目、#86 GAZOO Racing SPIRIT 86はピットイン。松井孝允へと代わる直前で17秒のリードを築いていたから、次の周に#41 UEMATSU×TRACY SPORTS ings S2000は、寺西に代わるが、前に出すことは許さなかった。だが、実際のポジションは2番手! というのは、わずか2周で吉本晶哉から太田侑弥に交代していた#93 SKR ENGINEERING S2000がクリアラップを取り続けることで、先頭に立っていたというわけだ。そこで#86 GAZOO Racing SPIRIT 86は、#93 SKR ENGINEERING S2000と同時にピットに入ることに。39周目からは、最終スティントをそれぞれ吉本と井口卓人に託すこととなる。
その間にトップへ#41 UEMATSU×TRACY SPORTS ings S2000が戻るも、先に述べたとおり手負いの状態。無理もできず、藤田竜樹へ46周目に代わると、再び3番手に。そして周を重ねるごと一時は5秒以上に及んでいたリードを、次第に井口は詰めていく。2時間をちょうど超えたあたりで、吉本と井口は完全にテール・トゥ・ノーズ状態に。必死に堪えていた吉本ながら、それも2周が限度だった。52周目のシケインで、井口は再びトップに立つ。その後はグイグイと後続を引き離し続け、#86 GAZOO Racing SPIRIT 86は今季初優勝を飾ることとなった。
2位、3位は#93 SKR ENGINEERING S2000、#41 UEMATSU×TRACY SPORTS ings S2000がそのまま順位を保ってフィニッシュ。4位はペナルティをしっかり帳消しとした、野間一/中島佑弥/藤田弘幸組の#333 GLORY A-ONE FN2が獲得した。なお、小林康一と山田隆行がその後も力走を重ねた#58 ウインマックスTEINワコーズKRP☆DC5だったが、しっかり完走は果たしたものの16位に留まり、ポイントの積み重ねは許されなかった。
ST-5クラスは、開幕2連勝以来の3勝目をSPOON FIT3が獲得する
ST-5のトップ争いは、その後もしばらくは#2 ホンダカーズ野崎with BOMEXの山田、#99 BRP★J’S RACINGフィット3の大野、そして#95 SPOON FIT3の荒の順で重ねられた。10周目を過ぎたあたりから荒がやや遅れを取るも、それでも後続は寄せつけず。それから間もなく山田と大野のバトルがより激しさを増して、13周目の130Rで逆転が。しかし、山田もそれで遅れを取ることなく、18周目の1コーナーで再び前に出る。その間にまた荒が接近、2番手争いが激しくなると今度は山田が逃げていくことに。
結果論からいえば、この3台での壮絶なバトルは、早めに動いたチームが後の展開を有利に進めることになった。27周目には#95 SPOON FIT3が荒から中島に、28周目に#2ホンダカーズ野崎with BOMEXが山田から荒井康弘に、そして30周目に#99 BRP★J’S RACINGフィット3が大野から奥村に。この順番がそのまま順位となったからだ。40周目に#95 SPOON FIT3は松井へとスイッチ。先に2台は交代を済ませていたが、松井がコースに戻ると、セーフティマージンが築かれていた。そして#99 BRP★J’S RACING FIT3の梅本は、#2ホンダカーズ野崎with BOMEXの山下にプレッシャーをかけることは許されず、そのまま単独でフィニッシュすることとなった。
ST-4クラス、ST-5クラスともにポイントリーダーが3位に留まったことで、王座決定は最終戦に持ち越されることに。日曜日に行われるグループ1(ST-X、ST-1、ST-2、ST-3クラス)の決勝レースはどんな展開になるだろうか。早朝8時30分より30分間のフリー走行が行われた後、決勝レースは10時50分に熱戦の火ぶたを切ることになっている。
総合優勝:(ST-4クラス優勝)#86 GAZOO Racing SPIRIT 86
蒲生尚弥
「スタートからペースは、誰より自分の方が良かったんですが、最初の方で接触があって……。ただ、クルマはそんなにダメージがなかったので、そこから追い上げてトップはキープできました。ただ、他のクルマとの作戦の違いでいったんは順位が落ちてしまったんですが、先輩方ふたりが頑張って挽回してくれたので、ホッとしています。嬉しさよりもそっちの方の気分が大きいですね」
松井孝允
「すごく嬉しいですね。今回初めてこの86に乗らせてもらって、先週に決まった急な話だったこともあって、ドライバーふたりと監督、チームにすごくフォローしてもらいました。この優勝はドライバーの力だけじゃなくて、チームの力での勝利だとも思います」
井口卓人
「クルマの調子は練習からすごく良くて、メカニックの人たちがいいクルマを作ってくれましたから、優勝という結果を残したかったんです。でも、本当にスタート直後は、どうなることかと思って(笑)。それでも、最後は今まで以上に集中できて、かなりいい走りができたので満足しています。最後のオートポリスは86がすごく得意なコースですし、僕の地元ということもあるので、2連勝して笑顔でシーズンが終われるようにしたいです。応援、よろしくお願いします!」
総合15位:(ST-5クラス優勝)#95 SPOON FIT3
荒聖治
「ここ2戦、ノーポイントで終わっていたので、今回の勝利で久々にちゃんとした結果を残せました。3人ともすごくいいペースで走れて、本当に1位でフィニッシュできて、結果を残せて本当に良かったです。僕のスティントでトップに立つことはできなかったけど、明らかに後半のペースは良くて、タイヤのマネージメントをしっかりしていた甲斐はあったな、と思うんですが、前に出るのは難しいことでしたね」
中島保典
「僕がコースに戻った時にはトップに立てていて、今回はやっぱりみんな安定したラップで走れていたのが大きいと思います。チーム力で勝てたので、次のレースも同じような形で、また良い結果を残したいですね。チャンピオン獲得は、もちろん諦めていませんよ」
松井猛敏
「レース始まる前に荒選手と中島選手の順で、最後に僕乗る時には『トップで帰ってきてね』って約束でしたから、完全に100点満点のレースでした。僕は普通に走っていただけです。今回はかなり大事なレースで、チャンピオンが決まりかねないレースでしたので、さらに薄くなってしまいましたが、首の皮はまだつながっています。最終戦まで持ち込めることができたのが本当に嬉しいし、勝てたことも嬉しいです」
(はた☆なおゆき)