SUPER TAIKYU

RACES ARCHIVE 2015

REPORT

決勝レポート

ENDLESS ADVAN BMWが、最後尾からの大逆転勝利飾る!

 ツインリンクもてぎで幕を開けたスーパー耐久シリーズの決勝レースが、3月29日(日)に開催された。不安視された天候も、最後までドライコンディションが保たれ、まさに絶好のレース日和に。総合優勝を飾ったのは、#3 ENDLESS ADVAN BMWをドライブする、YUKE TANIGUCHI/峰尾恭輔/元嶋佑弥組。グループ最後尾からのスタートだったが、激しい追い上げに寄ってトップに浮上、一切トラブルなく逃げ切って、今季初勝利を飾ることとなった。

序盤をリードしたのは、KSF Direction Racing GT3Rだったが……

 スーパー耐久シリーズの開幕戦は、いきなり5時間レースからのスタートとなった。年間エントリーは50台で、今回はDドライバーの登録も認められたため、パドックのにぎわいぶりは、きっと想像に余りあるのではないだろうか。穏やかな天候でもあったため、スタート前にはそれほど緊張感に満ちておらず、和やかなムードも漂っていた。

 早朝に行われたウォームアップ走行には、予選をBドライバーの峰尾恭輔が走れず、決勝への出走が許されたとはいえ、グループ最後尾スタートとなる#3 ENDLESS ADVAN BMWも、無事に修復を終えて走れるように。トップタイムもマークできたこともあって、チームの志気が再び上がったのは言うまでもないだろう。

 決勝レースは、ほぼ12時20分に1周のフォーメイションラップの後に、グリーンシグナルが灯され、開始された。ここで鋭いダッシュを決めたのは、ポールシッターの小林崇志。#32 KSF Direction Racing GT3Rのアクセルを力一杯踏み込み、1コーナーにトップで飛び込むと、そのままリードを広げ続けていった。スタート前に「全車周回遅れにしてみせます」と語っていた小林は、実際に同じST-Xクラスの車両3台を含み、周回遅れにして、2番手の#24スリーボンド日産自動車大学校GT-Rを駆る藤井誠暢すら、13秒差とした34周目に飯田太陽にバトンタッチ。素早いピットワークも後押しして、代わってトップに立った#24スリーボンド日産自動車大学校GT-Rが40周目に高星明誠に交代すると、差は36秒にまで広がっていた。

 大量のリードに守られた飯田は、65周目にTetsuo Oginoに交代。その間に、再び#24スリーボンド日産自動車大学校GT-Rはトップに立ち、今度は高星の築いたリードによって、84周目に代わった星野敏もポジションをキープする。これがスーパー耐久デビュー戦である星野にとって、周回遅れを抜き続けていくレースも初めて。そんな中、迫ってきたのはOginoだけではなく、#3 ENDLESS ADVAN BMWの峰尾も! スタートからのYUKE TANIGUCHIの激しい追い上げで間もなく5番手に上がり、40周目に代わった元嶋佑弥もハイペースで走行。71周目に2番手に浮上し、81周目に代わった峰尾はピットのタイミングでひとつ順位を落としてはいたが、徐々に先行する2台との差を詰めてきたのだ。

 勢いに乗る峰尾は、97周目にOginoをかわし、さらに99周目にはトップに浮上。そのまま後続との差を広げていった。最終スティントは、#3 ENDLESS ADVAN BMWは元嶋が、#24スリーボンド日産自動車大学校GT-Rは高星が、そしてKSF Direction Racing GT3Rは小林が再び担当。それぞれ勢いのある若手だけに、激しいバトルに期待がかかるも、元嶋は難なく逃げ切りに成功。逆に小林は駆動系トラブルのため、残り4分を切ったところでコース脇にクルマを止めて、無念のリタイアを喫することとなった。#3 ENDLESS ADVAN BMWのST-Xクラスにおける勝利は、昨年の第3戦・富士以来。最後尾からの大逆転勝利に、ドライバー3人は大喜びの様子だった。

 なお、#5 MACH MAKERS GT-Rは不安材料だったミッションのトラブルに見舞われ、無念の6位に。#1 GTNET ADVAN C-WEST GT-Rは駆動系トラブルのため、リタイアとなった。

DAMD MOTUL ED WRX STIは、デビューウィンならず

 ST-2クラスの予選トップは、大澤学/松田晃司組の#59 DAMD MOTUL ED WRX STI。今回は吉田寿博を体調不良で欠き、しかも新車完成直後のレースとあって、厳しい戦いとなるのはある程度、覚悟していたはずだ。だが、オープニングラップの1コーナーで、トップを奪われることまで想像はしていなかっただろう。切れ味鋭いダッシュで、いきなり先頭に立ったのは、#20 RSオガワADVANランサーの松本武士。これが功を奏して、間に2台のST-3車両も挟むこととなり、そのまま松本はレースをリードしていく。しかし、下垣和也と松田との対決では、キャリア的に#20 RSオガワADVANランサーに分が悪かった。耐え切れず、67周目にトップを明け渡す羽目に。

 それでも下垣は大きく遅れることなく松田に続き、2台は71周目、同時にピットイン。先にピットを離れたのは#20 RSオガワADVANランサーの伊藤勝一で、逆に#59 DAMD MOTUL ED WRX STIはドリンクボトルなどの交換に手間取って、大きくタイムをロスしてしまっていた。40秒ほどのリードを築いた伊藤ながら、間もなくドライビングスルーペナルティが命じられる。ピットロードの速度超過が原因だ。これで形勢は一気に変わるかと思われたが、わずかながらも#20 RSオガワADVANランサーは、早く1コーナーに飛び込むことに成功。そして、最終スティントの勝負は小林且雄に託された。コースインした小林と、松田の差は4秒。これが広がりも、縮まりもして緊張感がコース上にみなぎっていた。

 だが、タイヤを4本換えていた#20 RSオガワADVANランサーに対し、#59 DAMD MOTUL ED WRX STIはフロント2本だけの交換に留めていたことが、展開に大きく影響を及ぼした。辛くも逃げ切りを小林が果たし、#20 RSオガワADVANランサーが久々の優勝を飾ることとなった。3位は#31 HASEPRO RACING LANCER EVOLUTION Xの、朝倉貴志/長谷川智秀/長谷川奉徹/小林新一組が獲得した。

asset ingsテクノZ34が、有終の美を飾る

 序盤のST-3クラスは、#34 asset ingsテクノZ34の佐々木雅弘、そして#38ムータレーシングTWS IS350の阪口良平による対決が、最大の見せ場になった。スタートを決めた佐々木だったが、阪口は食らいついて離れず、7周目には早くも逆転を果たす。とはいえ、同じように佐々木も大きく遅れを取ることなく続き、そのままバトルが続いていくことが期待された。先にピットに入ったのは阪口。しかし、点火系のトラブルによって、しばらくピットを離れることができず、植田正幸がコースに戻った時には、もう勝負権は失われていた。

 そこから先は#34 asset ingsテクノZ34のひとり舞台。まるで昨年のレース展開を見るように。前嶋秀司、そして再び佐々木が、ラストは久々の国内レースとなる佐藤公哉による、リレーを完璧に決める圧勝に。次回からレクサスRC350を投入する予定とあって、クルマに有終の美を飾らせることとなった。2位は#39 SARD Racing IS350の柴田優作/片山義章/平手晃平組が、3位は#14岡部自動車KYOSHINマイカーズZ34の山崎学/小松一臣/増田芳信/杉林健一組が獲得した。

ウインマックスTEINワコーズKRP☆DC5、なんともてぎで3年連続勝利!

 ST-4クラスの序盤のリーダーは、予選でもトップだった#41 TEAM HERO’S×TRACY SPORTS ings S2000の鶴田和也だったが、4周目の単独スピンによってポジションを落とし、やがてABSのトラブルにも見舞われて涙を飲むことに。ピットストップのタイミングの違いもあって、目まぐるしく順位が入れ替わっていたが、中盤からトップに立っていたのは、#58ウインマックスTEINワコーズKRP☆DC5の小林康一/ピストン西沢/塩谷烈州組だった。このチームともてぎの相性は抜群で、過去2年間はいずれも優勝。

 これに迫ったのは、#86 GAZOO Racing SPIRIT 86の蒲生尚弥/松井孝允組だった。サポートの86/BRZレース中のクラッシュで井口卓人にドクターストップがかかり、ふたりで力走を見せるも、ゴール間際には差は広がっていく一方。その結果、#58ウインマックスTEINワコーズKRP☆DC5が、もてぎ戦3連勝を達成することとなった。3位は#52埼玉トヨペットGreen Grave 86の番場琢/服部尚貴/平沼貴之組が獲得した。

ST-5クラスは#69 BRP☆J’S RACINGフィットが圧勝

 一度に20ℓまでしか給油できないため、ほとんどの車両が規定の3回を超えて、5回ものピットストップを強いられていたST-5クラス。そのタイミングの違いによって、目まぐるしく順位が入れ替わっていたように見えていたかもしれない。実際、序盤は#69 BRP☆J’S RACINGフィットの井入宏之、#2ホンダカーズ野崎with CUSCO&BOMEX FITの山田英二が何度もトップを入れ替え、これに#19 BRP☆J’S RACINGフィットの古宮正信が遅れを取ることなく続いていたからだ。

 しかし、これは井入の作戦どおり。しっかりペースを他の2台と合わせて走り、スティント後半にプッシュをかけて差を広げていたのだ。ここで築かれたマージンを梅本淳一と大野尊久が失うどころか、さらに増やしていって、気づけば大量のリードを手にするように。最終的には山田と山下潤一郎のドライブした、#2ホンダカーズ野崎with CUSCO&BOMEX FITですら、周回遅れにするほどの圧勝となった。

総合優勝(ST-Xクラス優勝)#3 ENDLESS ADVAN BMW

YUKE TANIGUCHI

「本当はクラスの最後尾まで1周で行きたかったんですけど、ちょっと次の週の1コーナーまでかかって。前のクルマが見えた時はけっこう離れていたんで、かえって開き直って、行けるところまで行くしかないと思うようにしたのが良かったんでしょう。幸先のいいスタートが切れました」

峰尾恭輔

「予選いらない? いりますよ! あれで30秒離されましたから。だけど、今回すべてうちのチームはうまくいきました、流れ的に。運も良かったと思うんですよね。昨日、予選を走れなかったですけど、あれ(インテークマニホ―ルドの破損)が、もし決勝で出ていたらリタイアだったんで、本当に何周かの差だったと思うんですよ。うちは運が良かったと思います。今年はいい年にしなきゃいけないんで、本当に良かったです」

元嶋佑弥

「楽しかったです、本当に。決勝はトラブルもなく、クルマもすごく速くて良かった。最後はすごく渋滞していたんで、無駄なことしても意味ないので、そこはちょっと安全マージン持って走りました。チームからも『そんな無理しなくても』って言われましたし。チームに夜遅くまで修理してもらって、それがこういう結果で返せたので、本当に良かったです」

総合7位(ST-2クラス優勝)#20 RSオガワADVANランサー

松本武士

「スタートが思いどおりにいって、スタート直後の1コーナーでパスできて、その後は間にST-3クラスの車両も入ってくれたので、そこで一気にマージンを作れて、次にバトンタッチできました。イメージどおりの仕事ができたので、自分の中ではほぼ100点に近いレースっていう感じでした」

下垣和也

「僕のスティントで59号車を前に行かせちゃったんです、抑え切れなくて。でも59号車と同じタイミングでピットに入って、向こうが作業に手間取っている間に、次の勝一さんが前に出られて、そのまま最後まで且雄さんが抑えてくれたので、本当に良かったです」

伊藤勝一

「10年ぶりのレースだったんで、久々に緊張しちゃいましたね! 緊張しちゃって、まず下垣くんからドライバーチェンジして、ピットロード出た瞬間にエンストしちゃったんですよ。それで頭、真っ白になってピットロードのスピード違反をやっちゃって、ペナルティを食らっちゃいました(笑)。20秒ぐらいのマージンを失っちゃったんですが、最後まで且雄さんが守ってくれて、本当にかっこいいですよね、いいところ持っていってくれました!」

小林且雄

「いや〜、疲れたよ、5年ぶりのレースは。5年ぶりに来て、いきなりこのバトルはしびれるでしょ! だってさ、せっかくもっとマージンあったのに、出て行ったらいきなり『5秒とか4秒差』とか言われて、『マジかよ』って。だけど、向こうはフロント2本(交換)で、うちは4本換えていったから、向こうも苦しくなるのは分かっていたブレーキが大丈夫だったので、ブレーキをちょっと頑張ってタイムを調整していた感じですね。カッコよかった?」

総合9位(ST-3クラス優勝)#34 asset ingsテクノZ34

前嶋秀司

「佐々木のスタートが良かったんだけど、その後すぐ抜かれて。まぁ、でも抜かれた後も離れず、うまい具合で自分にバトンもらってね。いつものように淡々と走っていました。クルマは何も問題ないし、いつものように普通に走っていただけなんで。まぁ、佐々木が頑張ってくれたから、最初にすごく!」

佐々木雅弘

「予選のタイム差が決勝でも出ているな、と。あのクルマ(38号車)に対してZ34は、ちょっと足りない、スピードが。だから、次のRC350には、すごく期待しているんですけど、最後のZ34での、僕らのレースだったんで、無事優勝で終われて良かった。勝てたので、すべてOKかな、と。結果的にはポール・トゥ・ウィン、終わってみれば!」

佐藤公哉

「僕はただ走っていただけで、佐々木さんと前嶋さんにマージンを、僕は2周ぐらいもらっていて安全運転でいけたんで、すごく楽でした。クルマも乗りやすかったです。佐々木さんと前嶋さん、チームに感謝ですね。楽なレースができました」

総合13位(ST-4クラス優勝)#58ウインマックスTEINワコーズKRP☆DC5

小林康一

「3年連続で、もてぎで勝てました! でも、決して楽勝なんかじゃなくて、けっこうきつかったですよ、みんなにいじめられながら。まわりは86ばかりで、本当に(笑)」

塩谷烈州

「小林さんはそう言うけど、蓋を開けてみればけっこう余裕はあった。前半のペースが86、すごく良かったので。それを見ていて、『これはあんまり無理しちゃいけないな』って逆にペースちょっと守っていたのが、かえって良かったのかもね」

ピストン西沢

「チームの3年連続優勝に貢献できて、非常に嬉しい限りです。3人とももてぎもいっぱい走っているし、特に俺はもてぎっ子だし。もてぎに関しては、いろいろノウハウはあるんで、それを最大限に生かして。セットアップが金曜日からすごくうまく進んで、そこんところを外さないように、割とマイペースというか、ペースは速めなんだけど、無理しない範囲で3人が走った。だから、良かったんだと思います」

総合28位(ST-5クラス優勝)#69 BRP☆J’S RACINGフィット

井入宏之

「完璧でしょう、作戦としては、無理もなく。最後、1時間半ぐらい残して後出しジャンケンできるぐらい離れていたからね。最初のスティントはちょっとロングだったけど、今までやったことないからタイヤの保ちが分からないので、一応ペース合わせて走っていて、残り何ラップって言われてから、ちょっとプッシュして離して、そんな感じで。すべてチームの指示どおり!」

大野尊久

「本当に、絵に描いたようと言ったらおかしいですけど、みんなきっちりと仕事して、誰もミスしないでゴールまでクルマを持っていけたと思います。井入選手のスタートからの上手な駆け引きというのは、さすがGTチャンピオンです。今年はこの調子で頑張ります」

梅本淳一

「なんか、やっとまともに勝てたかな。まともに勝たせてもらって嬉しいですね。オフの練習がやっぱり、けっこう練習しましたから。チーム全体の底上げをしました。今日のレースは常にリードしている、計算どおり、誰もミスしない。運転手がしっかりしていると、計画どおりに行くじゃないですか。非常に良かったと思います」

 

(はた☆なおゆき)

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