第1戦プレビュー
今年ももてぎから幕を開けるスーパー耐久
今年のスーパー耐久は全6戦での開催となり、第3戦・富士が1時間伸ばされて8時間レースに、最終戦・鈴鹿がWTCCとの併催ではなく、単独で争われることとなる。そして、この週末には、いよいよツインリンクもてぎでシリーズがスタート、いきなり5時間での長丁場での争いだ。エントリーは45台、必ずやエキサイティングなレースになるだろう。
8台で激闘を繰り広げるST-Xクラス
Aドライバーがすべてのクラスでシリーズを通じ、やむを得ぬ場合を除き変更できなくなり、またST-Xクラスにおける「プラチナドライバー」の認定基準も、スーパーフォーミュラ(フォーミュラニッポン)の参加実績、GT300のチャンピオン、優勝経験も今年は含まれるように。
逆に「プラチナドライバー」ではない、「ジェントルマンドライバー」に関しての規定も明文化され、Aドライバーとして登録しなければならず、「プラチナドライバー」はDドライバーの参加も認められる5時間、8時間レース以外は1名しか登録できなくなった。さらに「プラチナドライバー」の40%を超える周回は禁じられ、逆に「ジェントルマンドライバー」の周回数は25%以上と定められた。
他にも細かい規定変更はあるものの、これがいちばん知っておいていただきたい新規定である。ST-Xクラスにおける「ジェントルマンドライバー」に関しては、昨年の途中から紳士協定として定められていたのだが、これがはっきりと規定化されたこととなる。
さて、ここからはクラスごとの話題に。昨年も常時エントリーがあったのは2台でしかなかった、ST-1クラスが不成立なのは残念でならない。BMW Z4やポルシェ911GT3などがしのぎを削り合っていたクラスだが、世界的にFIA-GT3に役割が移ったということなのだろう。
そのFIA-GT3によるST-Xクラスが、今年は8台に。全体のバランスとしては、程よい台数と言えるだろう。連覇を狙う#1 GTNET ADVAN C-WEST GT-Rは、陣容を一新。GAMISANと吉田広樹、そして本来は星野一樹がドライブするが、開幕戦は柳田真孝が乗り込むこととなった。また、プラチナドライバーに対する新規定に応じ、離れた青木孝行は白井剛と藤波清斗とともに#5 MACH MAKERS GT-Rをドライブする。ただし、青木は完全に袂を分かったわけではなく、#1のGTNET MOTOR SPORTSと#5 TEAM MACH with MAKERS RACINGはジョイントでの参戦となっている。
もう1台のGT-R、#24スリーボンド日産自動車大学校GT-Rは、藤井誠暢のパートナーが星野敏と高星明誠に。そして、#3 ENDLESS ADVAN M3はYUKE TANIGUCHIと峰尾恭輔は代わらず、新たに元嶋佑弥が加わった。#16 REAF REAL ESTATE KiiVA BMWは、HIROと片岡龍也、現役復帰の阿部翼、Takashiという組み合わせに。ポルシェにスイッチされた、#32 KSF Direction Racing GT3Rは飯田太陽と小林崇志、Tetsuo Ogino、高木真一がドライブする。
新規エントリーも2台。#8 ARN AMG SLS GT3は永井宏明と佐々木孝太が、そして#10 Adenau SLS GT3はフィリップ・デベサとマイケル・グリーン、密山祥吾がドライブする。ちなみに密山はチーム運営にも携わるため、本来はスーパー耐久に集中する予定だった。
なお、エントリーリストのクラス表記に、一部ST-X+とあるのが分かるだろう。これはパーツ交換が自由に許されないFIA-GT3に対し、開幕前に申請すること、公平に供給されることを条件にホイール、ブレーキキャリパー、ダンパーなどの交換を認められた車両を指す。そのため、本来定められているBOPを上回らない性能調整が行われることになっている。
ST-2チャンピオンチームは、新車を投入!
ST-2クラスにおける、大きな話題はふたつ。まず、3連覇を狙うTOWAINTEC Racingが、マシンをスイッチし、#59 DAMD MOTUL ED WRX STIとして挑むこととなる。ドライバーは大澤学、吉田寿博、松田晃司で代わらず、揃って「いきなりは難しいでしょう」と語るも、チャンピオンチームとして恥ずかしくないポテンシャルを見せてくれるのは必至だろう。
そして、もうひとつはRSオガワから阪口良平が離れたこと。06年以来、同チームの牽引役として走ってきただけに、果たしてどんな影響を及ぼすか。#20 RSオガワADVANランサーには、下垣和也と5年ぶりのレース復帰となる小林且雄、松本武士が乗り込むこととなる。また、RSオガワからは大橋正澄も離れ、シンリョウレーシングチームに移籍。冨桝朋広と菊地靖とともに、エボXにスイッチした#6新菱オートDIXCELエボXをドライブする。
ST-3クラスで話題のニューマシン、レクサスRC350はいずれも開幕戦には間に合わず、第2戦・SUGOからの登場になりそうだ。RSオガワから移籍の阪口は、TRACY SPORTSからのエントリーに。植田正幸と堀田誠とともに#38ムータレーシングTWS IS350をドライブ。そして、そのTRACY SPORTSとSARD Racingがジョイントし、その名もSARD Racing IS350をドライブするのは、ジムカーナ王者の柴田優作、ルーキーの片山義章、そしてなんと平手晃平! この組み合わせはなかなか魅力的だ。
また、今年も3台のフェアレディZを走らせるOKABE JIDOSHA motorsportは、#15岡部自動車DIXCELチームテツヤZ34の長島正明、田中徹、田中哲也以外はドライバーのシャッフルが目立つ。特にオールドファンであれば、#195岡部自動車ZEROSUN195 Z34に輿水敏明の復帰を喜んでいるのではないだろうか。連覇を狙う、TECHNO FIRSTは今回1台のみで、お馴染みの前嶋秀司、佐々木雅弘、松原怜史に加え、佐藤公哉が久々に日本のレースに復帰し、#34 asset ingsテクノZ34をドライブするが、ここも完成次第、RC350にスイッチする予定となっている。
デミオディーゼルターボ、その実力やいかに?
ST-4クラスの連覇を目指す、TRACY SPORTSは、今年もS2000の2台体制からスタートするが、ここもドライバーのシャッフルが目立つ。車名はいずれもクルマ買取りHERO’S×TRACY SPORTS ings S2000で、#40には藤田竜樹、#41には長谷川伸司をAドライバーに据えて、それぞれいぶし銀のドライバーたちが囲む。植松忠雄はSKR ENGINEERINGに移り、太田侑弥と鈴木陽とともにTAKUMI×UEMATSU×SKR S2000を操ることになった。
昨年はST-5クラスでフィット3を走らせていたTEAM SPOONが、ST-4クラスに復帰し、孚海国際×SPOON S2000を走らせる。今年のST-4クラスには新車はないが、#49 ABARTH 695 ASSETO CORSEがカラーリングを変え、挑んでくるようだ。
そして、ST-5クラスではBRP★J’S RACINGがフィット3の2台体制として、連覇により万全の構えで挑む。ともに車名はBRP★J’S RACINGフィットで、#19は古宮正信と奥村浩一、新垣元が、そして#69は大野尊久と梅本淳一、井入宏之の組み合わせに。ここはチーム内闘争が盛り上がりそうだ。#2ホンダカーズ野崎with CUSCO&BOMEX FITは山下潤一郎と山田英二を軸に、開幕戦はチン・サンリンとレブスピード編集長の加茂新がドライブする。
何よりこのクラス最大の話題は、TEAM NOPROが国内レースとしては初めてとなる、ディーゼルエンジン搭載車、#17 DXLアラゴスタNOPROデミオSKY-Dを走らせることだろう。ル・マン24時間やWECではアウディが、そしてかつてのWTCCではセアトが、ディーゼルエンジンで挑んで活躍しているが、いきなりスーパー耐久でも……とはいかないだろう。しばらくは可能性を探る形となるが、それがどれだけのものなのか。開幕戦は野上敏彦、谷川達也、野上達也、山田弘樹がドライブし、歴史の一歩を記すこととなる。
話題豊富な今年のスーパー耐久、予選は3月28日(土)の13時から開始。決勝は29日(日)の12時15分に、グリーンシグナルが点灯する予定となっている。昨年は悪天候の中での戦いだったが、今年こそ天候に恵まれることを期待したい。
(はた☆なおゆき)