決勝レポート
大逆転勝利を飾ったのはREAF REAL ESTATE KiiVA BMW!
スポーツランドSUGOを舞台に、スーパー耐久シリーズの第2戦決勝レースが、5月24日(日)に行われた。総合のトップは、アクシデントの多発によって何度も入れ替わるも、何とか逃げ切りなるかと思われた、白井剛/青木孝行/藤波清斗組の#5 MACH MAKERS GT-Rは、残り20分を切ったところでストップ。その結果、大逆転勝利を遂げて最後に笑ったのは、HIRO/片岡龍也/阿部翼組の#16 REAF REAL ESTATE KiiVAだった。
総合トップに相次いだアクシデント
予選が行われた土曜日に引き続き、決勝レースの行われる日曜日も好天に恵まれた。風が吹くようになってからは心地よくもなったものの、それまでは5月とは思えぬほどの暑さで、クルマにもマシンも、そしてタイヤにも大きな負担がかかるのは、もはや必至と言えた。
13時28分、シグナルが赤から緑に変わり、レースはスタートした。トップで1コーナーに飛び込んでいったのは、もちろん#3 ENDLESS ADVAN BMWを駆るポールシッターの峰尾恭輔。そして、オープニングラップを終えた時には、予選よりひとつ順位を上げた#1 GTNET ADVAN C-WEST GT-Rの星野一樹が2番手に上がっていた。しかし、星野は5周目にピットへ。朝のフリー走行で黄旗提示中にスピンがあり、あらかじめドライビングスルーペナルティを科せられることが決まっていたからだ。これで8番手へと星野は後退。
もっとも手強い相手の後退もあり、逃げ続けていた峰尾ながら、ホームストレート上にデブリがあったことから、10周目から2周に渡ってセーフティカーが行われる。これで8秒ほどあったマージンを失ったものの、後続との間にバックマーカーを挟んでいたことが幸いし、最終コーナーから一気にスパートをかけた峰尾は、さらに差を広げることに成功。藤井誠暢が予選を走れず、グループ最後尾からのスタートとなっていた#24 スリーボンド日産自動車大学校GT-Rが、藤井自身の追い上げによって21周目には2番手に上がっていたが、#10 Adenau SLS GT3の密山祥吾がぴたりと食らいついて離れず。バトルを繰り広げていたことで、より#3 ENDLESS ADVAN BMWはマージンを稼ぐことになり、47周目のYUKE TANIGUCHIへの交代時には、実に35秒もプレゼントすることになった。
だが、その大量の貯金は最終コーナーの停止車両を回収するための、二度目のセーフティカーランによって、かなり失われてしまう。51周目から2周の実施の間に、差は14秒にまで縮まったばかりか、すでに白井との交代を済ませていた#5 MACH MAKERS GT-Rの青木をも近づけてしまう。青木は#24 スリーボンド日産自動車大学校GT-Rの星野敏を、まずは56周目にパス。その勢いで、TANIGUCHIにも近づいていき、激しいバトルを繰り広げた末に72周目のSPコーナーアウトで青木はトップに立つ。
それから4周後、青木とTANIGUCHIは同時にピットイン。それぞれ藤波、元嶋佑弥がコースに戻った時の順位入れ替えはなかったものの、その前には#8 ARN AMG SLS GT3の佐々木孝太が。後続を寄せつけることなく、その後も周回を重ねていったが、87周目の永井宏明への交代で3番手に。さらにセーフティカーラン中の追い越しがあったことから、10秒ストップのペナルティを科せられ、勝負権を失ってしまう。これで再び#3 ENDLESS ADVAN BMWがトップに立つ。
ところが、92周目に衝撃的なシーンがモニターに映し出される。なんと#3 ENDLESS ADVAN BMWが、SPコーナーの立ち上がりで止まっているではないか! ST-4車両に追突され、ひどいダメージを負って無念のリタイアを喫することに。これで#5 MACH MAKERS GT-Rがトップに立つが、ゴールまで20分を切った102周目に突然スローダウン。必死にピットにマシンを戻そうとした藤波ながら、最終コーナーの上り勾配を進み続けることは許さなかった。「たぶん電気系。それまで何もなく、突然」と藤波はガックリうなだれた。
代わってトップに立ったのは、一時はクラス最下位だった#16 REAF REAL ESTATE KiiVA BMW。第2スティントを走行した片岡が、周回遅れとなりながらトップにひけを取らぬペースで走行し、75周目からバトンを託されていた、阿部もコンスタントに走っていたことが功を奏することに。強烈なサバイバルゲームに生き残り、総合優勝を獲得することになった。2位は#8 ARN AMG SLS GT3が、そして3位はTetsuo Ogino/小林崇志/飯田太陽組の#32 ケーズフロンティアDirection Racing GT3Rが獲得。
また、60周目の接触で足まわりにダメージを負って、長いピットでの修復を強いられていた#24 スリーボンド日産自動車大学校GT-Rながら、何とか復帰がかない、21周遅れながら4位を得ることとなった。
ST-3クラスとST-4クラスで、終盤に繰り広げられた激しいトップ争い
ST-2クラスで予選こそ2番手ながら、2連勝を狙っていた下垣和也/小林且雄/松本武士組の#20 RSオガワADVANランサーはグリッドに並べられることはなかった。朝のフリー走行でエンジンが壊れ、スペアがなかったため、無念のリタイアを喫していたからだ。
強敵の戦線離脱で、もはや大澤学/松田晃司組の#59 DAMD MOTUL ED WRX STIに、プレッシャーをかけられる者は存在しないも同然だった。大澤がスタートと同時に後続を引き離し、そこから先はクルージングを楽しむことに。松田から再びステアリングを託された大澤の前には、2台のST-3車両がいたが、トップを争っていたことから無理をせず。総合では6位に甘んじたものの、ニューマシンでの初優勝を2戦目で飾ることとなった。
ST-3クラスでは、予選2番手の#34 asset ingsテクノZ34がスタートでトップに立ち、そのまま後続を引き離していたが、最初のセーフティカーランに合わせて早々と前嶋秀司から佐々木雅弘にスイッチ。そこから先は阪口良平が駆る、#38 ムータレーシングTWS IS350がトップを走行する。しかし、阪口から植田正幸に代わると、トップに立っていたのは#15 岡部自動車DIXCELチームテツヤZ34の田中哲也で、さらに間には佐々木も。そのふたりがドライバー交代を行うと、再び植田がトップに立つが、これはドライバー交代のタイミングの違いから。88周目に堀田誠に代わると、#38 ムータレーシングTWS IS350は3番手に。
そして焦点は、#34 asset ingsテクノZ34、#15 岡部自動車DIXCELチームテツヤZ34によるトップ争いへと切り替わる。佐藤公哉と田中徹、若手同士の対決が、場内を大いに沸かせることに。佐藤にプレッシャーを何度もかけた田中徹ながら、相手も百戦錬磨のドライバーとあって屈してはくれず。最後はストレートで並びかけるも、辛くも佐藤が先頭でフィニッシュ。5クラス中、唯一#34 asset ingsテクノZ34が開幕2連勝を果たすこととなった。そして、この2台は総合でも4位、5位を得た。
ST-4クラスで序盤のリーダーを務めたのは、#55 SunOasis AUTOFACTRY 86のたしろじゅん。しかし、伊藤毅への交代後、スピンによって順位を落とす。代わってトップに立ったのは#52 埼玉トヨペットGreen Brave 86。最初のセーフティカーラン中に平沼貴之から服部尚貴に交代、ベテランが目の覚めるような勢いで追い上げていた。そして、最終スティントを46周目から託された番場琢も、しばらくは後続を寄せつけずに周回を重ねていたのだが……。「代わってから10周ぐらいしたところでABSが壊れてしまって。ブレーキでまったく無理できなくなってしまった」と番場。そこにじわりじわりと近づいてきたのが、#13 ENDLESS ADVAN 86の山内英輝だった。そして、82周目にパスしてトップに浮上。そのまま逃げ続けるかと思われたものの、最後のセーフティカーランが山内と番場の差を再び詰めることに。
しかも、間に他のクラスの車両を挟まなかったことから、番場が意地を見せた。リスタート後にスリップストリームから抜け出し、1コーナーでオーバーテイクを試みるが、山内も鉄壁のガードで逆転を許さず。最後の力を振り絞ってしまった番場は、その後は山内に引き離されてしまうも、平沼と服部を表彰台に導くことには成功する。#13 ENDLESS ADVAN 86は、SUGOでの2年連続優勝を飾ることとなった。3位は松井猛敏/中島保典/YEN Pin-Kuan組の#95 孚海国際×SPOON S2000が獲得した。
ST-5クラスは三つ巴の戦いの末に、ホンダカーズ野崎with CUSCO & BOMEX FITが優勝
ST-5クラスでスタートからトップを走ったのは、#69 BRP★J’S RACINGフィット3の梅本淳一だったが、4周目に#2 ホンダカーズ野崎with CUSCO & BOMEX FITの山田英二が逆転。前回とは異なり、そのまま後続を引き離していく。だが、それぞれ山下潤一郎とチャールズ・カキンに代わると差は詰まり、激しいトップ争いが演じられることとなる。国内レース初参戦となるカキンも抜けずにはいたが、ぴたりと食らいついていく。
そんな中、#2 ホンダカーズ野崎with CUSCO & BOMEX FITに、10秒ストップのペナルティ宣告が。ピットの作業違反もあったためだ。これで#19 BRP★J’S RACINGフィット3の古宮正信の先行すら、山下は許してしまう。だが、最終スティントを再び託された山田が猛追を見せ、80周目に2番手に。さらにタイヤが苦しくなったことから、#69 BRP★J’S RACINGフィット3はピットに入ったことで、トップを奪い返すことさえ成功する。そのまま逃げ切った#2 ホンダカーズ野崎with CUSCO & BOMEX FITが今季初優勝。さらにラスト6分で3番手に後退した#19 BRP★J’S RACINGフィット3は、それから2分後に、ハブボルトの破損からタイヤが脱落! チェッカーを受けることは許されず、無念のリタイアを喫している。
次回のレースは7月4〜5日に、富士スピードウェイを舞台に行われる。間違いなく今回以上に暑さを敵とする戦いは、今季最長の8時間レースでもある。よりドラマチックな展開になるのは、もはや確実だとさえ言えるだろう。
ST-Xクラス優勝 #16 REAF REAL ESTATE KiiVA BMW
HIRO
「スタート直後はできるだけ抜かれないように……と思ったんですが、それよりも自分のペースで、とりあえずクルマを次のドライバーに渡すってことだけを心掛けました。とにかく台数が多かったので、本当にそれだけを! 最後、見守っている時はドキドキでした。前を走っていたクルマにトラブルが相次いだので、いつ自分のクルマにも出るか分からなかったから。それも心配だから、ゴールするまで心配でした。S耐では初優勝です」
片岡龍也
「交代してからクルマの調子も良くて、自分のペースで走りながら、セーフティカーも絡んだりして、その時点で前を走る8号車に追いついたり、ところどころ後半、面白いところもあって。前の2台に対しては、周回数も違うので、ちょっと遠いかなと思ったんですが、本当に見ているとどんどんと、バタバタと(笑)。前を走るクルマがトラブっていくんで、まぁラッキーもありました。一瞬、元嶋選手のクラッシュにはひやっとして、素直に喜べないなと思ったんですが、無事みたいなんで素直に優勝を喜びたいと思います」
阿部翼
「3年ぶりの、復帰2戦目で優勝です。HIROさんも片岡選手もクルマも、チームの方もいろいろまとめてくださって、本当に感謝しています。台数も多くて、難しいレースだったので、本当に嬉しいですね。とはいえ、トップに立ってからも、まだ時間は残っていましたし、コースに破片もあったから、逆にトップに立ってからの方が恐怖心は出てきましたね」
ST-2クラス優勝 #59 DAMD MOTUL ED WRX STI
大澤学
「スタートでだいぶ同じクラスのクルマを離すことができたので、あとは自分の走りをしっかりして、クルマを壊さないことを強く意識して走りました。最後は無理しませんでした、前は違うクラスでトップ争いをしていたので。無理に抜くのはやめようと(笑)」
松田晃司
「まず1勝です! 次もいい結果でつなげられるように、頑張っていきたいと思います。トラブルもいろいろあったんですが、あっても決定打にならないところが、うちの強さだな、と最近は特に思います」
ST-3クラス優勝 #34 asset ingsテクノZ34
佐藤公哉
「もうギリギリでした。あと1周あったら、やられていたと思うので。最後、ST-5クラスの全然後ろを見ていないクルマがいて、それが寄ってきてぶつかりそうになった時に近づかれたので……。でも、良かったです」
佐々木雅弘
「公哉にも試練だと思うんだけど、僕も真ん中で逃げて10秒ぐらいくれてやったのに、なくしてくれたから胃が痛かったです(笑)。これから公哉と前嶋さんと3人で組んでいくんで、公哉にもこういう試練を与えて、成長してもらわないと。前嶋さんがしんどい時に、公哉に行ってもらうしかないんで。これでだいぶ成長してくれたかなと思います」
ST-4クラス優勝 #13 ENDLESS ADVAN 86
山内英輝
本当にチームの皆さんがいい戦略を採ってくれて、最後にセーフティカーが入った時に、自分たちは4輪交換して出て行ったから、最後それでラップタイムがすごく良くて。本当にチームのみんなのおかげで勝てたので、すごく感謝しています。」
村田信博
「チーム的にうまく作戦を、その場、その場でアレンジしてもらって、結局ぼくらも山内に頼り気味だったけど、昨日からのあいつの気合いの入り方がすごかったんで、僕らも引っ張られて。本当に、あいつにだけ負担をかけないように、僕らもちゃんとしたレースをしていきたいと思っていました。まぁ、今回は本当に『山内、ありがとう!』って感じかな」
島谷篤史
「S耐デビュー2戦目で、表彰台のてっぺんに上がらせてもらえるなんて、本当にこんな嬉しいことはないですよね。もう、山内選手がすごいスーパーラップで、ガンガン追い上げてくれたので、頼もしいですね」
ST-5クラス優勝 #2 ホンダカーズ野崎with CUSCO & BOMEX FIT
山田英二
「けっこうタイヤがきつかったんで、このまま逃げ切れるかな、と不安だったけど、うちだけじゃなくてライバルであるJ’Sレーシング勢もきつそうで、それを何とかカバーしながら、お互い駆け引きしていましたね。その中でペナルティストップもあり、終わったかなと思ったんですが、山下くんも頑張ってくれてポジションを回復して、さらにセーフティカーが入ったり、いろんなことがあって、最終的にこっち向きに運が来たんじゃないかな。けっこう嬉しい!」
山下潤一郎
「クルマの速さが、J’Sに近づいたというのが何より嬉しいですね。予選でも差がつかなくなって、コース上でも圧倒的に負けることがないんで、いい勝負だったと思うんで。でも、ペナルティもあったし、向こうの方が若干タイヤにきつかったみたいで、もう1回入ってくれたのと、セーフティカーのタイミングが本当に僕らの方に風が吹いてくれた感じで、本当に嬉しかったです」
加茂新
「次は乗れるように、頑張りま〜す(笑)。(全戦乗らずに、シリーズチャンピオン狙うそうです・山下)」
(はた☆なおゆき)