SUPER TAIKYU

RACES ARCHIVE 2015

REPORT

決勝レポート

ENDLESS ADVAN BMWが前回の雪辱晴らす、今季2勝目をマークする

 スーパー耐久シリーズ第3戦の決勝レースが、富士スピードウェイで7月5日(日)に行われた。梅雨時とあって、目まぐるしく天候が変化する中、まずはセーフティカースタートでの開始となった。天気予報では絶えず雨が降り続くことが告げられていたが、実際にはドライタイヤも装着できたほどで、天候変化による波乱は一切起こらなかった。そんな中、優勝を飾ったのは予選こそ5番手だったが、コンスタントな走りが決勝レースでは光っていた、YUKE TANIGUCHI/峰尾恭輔/元嶋佑弥組のENDLESS ADVAN BMW。前回のクラッシュによるリタイアのリベンジを果たすとともに、開幕戦に続く今季2勝目をマークした。

予報で告げられたほどには、荒れなかった天候

 8時55分にスタート進行が始まった時は小雨が降るに留まり、それでも路面は濡れたままだったため、全車がウェットタイヤを装着してグリッドに並んだ。しかも、富士スピードウェイが位置する小山町では、大雨警報が出されていたこともあり、いずれ強い雨が降ることを、誰もが覚悟していたはずだ。レースはセーフティカースタートでの開始となり、1周の先導の後にバトルが本格的に開始される。

 先頭でレースを開始したのは、もちろんポールシッターで#8 ARN SLS AMG GT3を駆る佐々木孝太。そのままリードを広げ続け、15周目には2番手に15秒の差をつけた。次の周には#16 REAF REAL ESTATE KiiVA BMWの片岡龍也を、#1 GTNET ADVAN C-WEST GT-Rの吉田広樹がかわす。2番手に浮上した勢いそのままに、吉田は孝太にも迫っていったが、それからわずか4周でピットに。なんとアンダーカウルが外れてしまったのだ。長い時間かけて復帰を果たしはしたものの、またも#1 GTNET ADVAN C-WEST GT-Rは勝負権を失ってしまう。

 また、その頃には雨も完全にやんで、路面状態も向上していたことから、1時間経たぬうちにドライタイヤに交換するチームも。いち早く交換したことが功を奏し、全車が最初のピットストップを終えた後、トップに立っていたのは#24 スリーボンド日産自動車大学校GT-Rを駆る高星明誠。しかし、そのまま逃げることは許されず、やがて片岡の逆転を許すこととなる。

 ピットストップのタイミングの違いもあって、#24 スリーボンド日産自動車大学校GT-R は再びトップに立つことになるが、3時間目を間近にして霧がにわかに濃くなっていく。そのため、92周目から99周目まで時間にして20分間以上もセーフティカーがコースに入ることに。せっかく築いたリードが水の泡となったばかりか、徐々に近づいてきたのが#3 ENDLESS ADVAN BMWのYUKE TANIGUCHIだった。星野敏を113周目に捕らえてトップに躍り出る。TANIGUCHIからステアリングを託された元嶋佑弥もまたトップを走行し、後続を引き離していった。

 そんな中、コース上での火災が相次ぎ、136周目から140周目までの約20分間、またもSCランが行われることに。やはり元嶋はマージンを失ったものの、リスタート後は何事もなかったかのように差を広げていく。その後の峰尾恭輔〜再び元嶋のリレーも完璧で、#24 スリーボンド日産自動車大学校GT-Rが藤井誠暢から高星に代わった直後の215周目だけは先行を許したが、ダンロップコーナーですぐ逆転を果たした後は、もう#3 ENDLESS ADVAN BMWの脅威となる車両は現れなかった。

 3位は白井剛/青木孝行/藤波清斗組の#5 MACH MAKERS GT-Rが獲得し、今季初めて表彰台に立つことに。4位はHIROMASA NISHIDA/片岡龍也/阿部翼組の#16 REAF REAL ESTATE KiiVA BMWが獲得し、またスポット参戦で注目された、モック・ウェン-サン/濱口弘/リチャード・ウィー組のクリアウォーターレーシング458 GT3は、5位でフィニッシュ。GAMISAN/星野一樹/吉田広樹/安田裕信組の#1 GTNET ADVAN C-WEST GT-Rは、最下位8位ながら完走を果たしている。

ST-2クラスではDAMD MOTUL ED WRX STIが連勝を飾る

 ST-2クラスを最初にリードしたのは、予選トップだった#59 DAMD MOTUL ED WRX STIを駆る大澤学だったが、食らいついて離れなかったのが#20 RSオガワADVANランサーの松本武士。5周目には逆転を果たし、#59 DAMD MOTUL ED WRX STIが大澤から松田晃司に代わった後も寄せつけずに周回を重ねていった。

 流れが変わったのは、第3スティントから。68周目にトップを争う2台は同時にピットイン。そして、素早いピット作業で#59 DAMD MOTUL ED WRX STIは、#20 RSオガワADVANランサーの直後でコースに戻ったばかりか、助っ人山野哲也が1コーナーで早々と逆転を果たす。そこから先は完全に逃げモード。やがて#20 RSオガワADVANランサーにはギヤトラブルが発生したこともあり、#59 DAMD MOTUL ED WRX STIは難なく逃げ切りを果たし、2連勝を飾ることとなった。

DENSO Le Beausset RC350がST-3クラスでデビューウィンを達成!

 ST-3クラスでレースの大半を支配したのは、予選でも圧倒的な速さを見せていた#38 ムータレーシングTWS IS350だった。スタートから阪口良平が逃げまくり、ピットストップのタイミングでトップを明け渡すことはあったが、堀田誠と植田正幸とも息がしっかり合っていただけに、最後に笑うことが大いに予想された。実際、大量のリードに守られて、182周目から阪口が最終スティントを担当するはずだった。しかし、その直前の接触によってフロントバンパーにダメージが。走行に支障があるほどではなかったものの、給油中に修復作業を行ってしまったため、ドライビングスルーペナルティを命じられてしまう。

 代わってトップに立ったのは、嵯峨宏紀/新田守男/中山雄一/山下健太組の#62 DENSO Le Beausset RC350。徹底した燃費走行でピットでのロスを最小限としていたことが、終盤になって実を結んだのだ。それでも最大で1分20秒にも広がった差を阪口は、みるみるうちに詰めていき、223周目にはついに10秒を切って新田にプレッシャーをかける。しかし、ここまでだった。それ以上走れば、規定で許された周回をオーバーしてしまうため、次の周にやむなく堀田に交代。それでも2位でゴールできれば御の字だっただろう。しかし、最終ラップに#38 ムータレーシングTWS IS350はST-Xクラスの車両に追突され、無念のリタイアに。

 逃げ切りを果たした#62 DENSO Le Beausset RC350は、クルマにとってもチームにとっても、スーパー耐久デビューウィンを果たすこととなった。また、最後の最後に繰り上がって2位を得たのは、山崎学/小松一臣/増田芳信/杉林健一組の#14 岡部自動車KYOSHINマイカーズZ34。また、#34 asset ingsテクノRC350は相次ぐトラブルにより、レース続行を断念、そして#39 SARD Racing RC350はブレーキトラブルでクラッシュし、早々にレースを終えることとなっていた。

ST-4は孚海國際・SPOON S2000が、ST-5は#69 BRP☆J’S RACINGフィットが優勝

 台数の多さもさることながら、実力伯仲で絶えず激戦となるST-4クラス。もちろん今回も例外ではなく、予選トップだった#40 車買い取りHERO’S×TRACY SPORTS S2000の吉本晶哉を皮切りに、目まぐるしく先頭が入れ替わった。しかし、その流れを最初のSCランが寸断した。SCの入った場所により、#93 TAKUMI×UEMATSU×SKR S2000と#40 車買い取りHERO’S×TRACY SPORTS S2000、そして#86 TOYOTA Team TOM’S SPIRIT 86の3台以外は周回遅れとなってしまったからだ。

 しかも、#40 車買い取りHERO’S×TRACY SPORTS S2000は石川京侍の韋駄天ぶりも光り、さらに2回目のSCランには給油だけを行い、より多くのマージンを獲得。そのまま逃げ切ることと思われた。最終スティントを担当した寺西玲央にとっては、もはやビクトリーランも同然であったはずが……。ピットクルーとの連携が不十分で、給油中にエンジンをかけてしまったため、なんとドライビングスルーのペナルティが。この時点で2番手を走行していた、#95 孚海國際・SPOON S2000の松井猛敏の前でコースに戻ることはできたが、差はわずかに5秒!

 そこから繰り広げられた寺西と松井のバトルは、壮絶の一言だった。必死にガードを固めた寺西だったものの、211周目にはついに逆転を許してしまう。そのまま逃げ切った#95 孚海國際・SPOON S2000の松井は、表彰台で中島保典、そして助っ人として加わった黒澤琢弥とともに勝利の美酒を味わうこととなった。  ST-5クラスでは、予選でクラッシュした#2ホンダカーズ野崎with CUSCO & BOMEXフィットのダメージが予想以上に大きく、決勝出走を断念。これにより、#69と#19、BRP☆J’S RACINGフィット同士の一騎討ちが繰り広げられることになる。ピットタイミングの違いもあり、そのつどトップを入れ替える展開となるが、最後まで同一周回での争いが続いていた。

 最後に笑ったのは、大野尊久/井入宏之/梅本淳一/チャールズ・カキン組の#69 BRP☆J’S RACINGフィットで、開幕戦以来の2勝目を獲得することとなった。

 なお、ST-1クラスで孤軍奮闘だった、坂本祐也/池田大祐/石原将光/余郷敦組の#51 DIAMANGO BMW Z4は目標としていた完走を無事果たし、総合でも10位につけていた。

ST-Xクラス優勝 #3 ENDLESS ADVAN BMW

YUKE TANIGUCHI

「前回は、あと40数分というところで突然のクラッシュだったので、次はもう直らないんじゃないかと思っていて……。それをメカニックたちが頑張ってくれて、直してくれたからには、決勝はクルマをいたわって、カメさん走法で行こうと。それがうまくいきました」

峰尾恭輔

「一時は出場も危ぶまれる中、チームがクルマを間に合わせてくれたことを、すごく感謝しています。どうしても予選はシェイクダウンみたいな状態だったので、速さはなかったんですが、その分はドライバーがそこを補おうと。最後まで諦めないで、強いレースをしようってことでやったのが功を奏したんだと思います。じつのところ、序盤はきつかったんですけど、終わってみれば、こういう形で終われたので感無量というか、本当に感謝です!」

元嶋佑弥

「良かったです、楽ではなかったんですけどね。タイヤも最後(のスティント)はそのままだったので、出て行ってすぐ目の前にいたんで、どうしようと思っていたんですが、思ったよりあっさり抜けたんで、それが結果的に良かったですね。とはいえ、いろんなところを守りながら走っていたし、前回あんなこと(クラッシュ)があったので、同じことはやらないようにクルマに優しく、なおかつ集中して走れました。クルマ的に苦手な富士で、これだけいい結果が残せたのも本当に良かったです」

ST-1クラス優勝 #51 DIAMANGO BMW Z4

石原将光

「SUPER TECに出場3回目で、やっと完走を果たせました。もうメカニックさんや他のドライバーの協力によって、何とか……。このレースでトップチェッカーを受けられたのは初めてなので、本当に嬉しいです」



ST-2クラス優勝 #59 DAMD MOTUL ED WRX STI

大澤学

「スタートで僕は先行されちゃったんで、ちょっとウェットのバランスが悪かったみたいで、でも先輩方が控えているので、きっと借りを返してくれると思って、しっかり自分の走りをしました。これで2位と、だいぶポイントの差がついちゃったんで、今後もずっと勝っていきたいんですけど、もっと盛り上げていきたいと思っています」

松田晃司

「けっこう、まわりがトラブっていますからね。僕らはこれ以上ない感じですけど、もうちょっといいレース見せたいです。だからって、そんな余裕はなくて、最終的にまわりのクルマがトラブルを抱えているので、そんなにね……」

山野哲也

「出て行ってすぐ、1コーナーで抜いちゃった。無線で『すぐ前にいるのは、同ラップのライバルだよ〜』って言われた時にはもう(笑)。タイミング良く、コンディションの悪い時に乗せてもらったんで、悪いコンディション大好きだし。いいチームだったよね、強い。どんなことがあっても取り返すことのできるチームに合流させてもらったので、とてもいい、楽しい、嬉しいレースをさせてもらった。ちなみに僕、富士スピードウェイでレース、初優勝です。GTもない、S耐もない、シビックレースもない。初優勝、レース歴25年で(笑)」

吉田寿博

「ピット作業が素晴らしかったね。それと山野選手にはレースウィークで初めてスリックタイヤを決勝で履いてもらったら、『スリックタイヤ、どうやって走るの』って(笑)。いい仕事してくれたし、富士が初優勝って、すごいよね、俺も聞いてビックリした。うちのチームに来たら、絶対勝つことになっているんだよ」

ST-3クラス優勝 #62 DENSO Le Beausset RC350

嵯峨宏紀

「いや〜、ギリギリでした。最後、1回ピット減らすというふうに決めたので、途中から燃費走行に切り替えて。コース上で戦えないんですよ、ペース的にちょっと違い過ぎて。なので、戦力と知力の部分で戦おうと。チームの総力を結集して、こういう結果につながったんで、本当に嬉しいし、RC350としてもデビュー戦だったので、本当に今は嬉しいという言葉以外ないですし、本当に最高のチームで戦えたので、幸せだなぁと思います」

新田守男

「まぁ、気を遣いました、久々に。僕らはあんまりペース良くなかったので、燃費で何とか有利に進めるしか手がなかったから。でも4人のドライバーみんな、あとはコンディションの悪い状況でもミスなく走ってくれたんで、最後、僕がガス欠しちゃって終わっちゃったら、ねぇ!  最終ラップのセクター3でガス欠症状出たから、本当にギリというか……。パフォーマンスでは正直、まだまだマシンを速くしなきゃいけないけど、みんなが本当にミスなく走れたんで、それが今回のデビューウィンにつながったんじゃないかな、嬉しいです」

中山雄一

「最後は劇的で、ピットの空気が一瞬、止まったんですけど、無事にゴールできて良かったです。自分のスティントは雨が降っていて、スリックだったんですが、雨降っている方が調子良かったんで、まわりが遅くなって、いいレースができました。去年もIPSで(ST-1クラスを)勝っていますけど、新しいチームで、新規参入のクルマで、いきなり結果が残せたのが嬉しいですし、このメンバーに加えてもらって良かったと思います」

山下健太

「すごいレースでしたね、僕の時は普通だったんですけど、ちょっと雨は降ったりしましたが、そんなに難しくはなかったですね。今回は走っているより、見ている方が大変でした。一応、4人の中でタイム的には良かったので、それも良かったかなぁ、と思います。クルマともどもS耐のデビュー戦で勝てたことも良かったです」

ST-4クラス優勝 #95 孚海國際・SPOON S2000

松井猛敏

「まさか、勝てるとは! 僕らはSCランで1ラップ損しちゃったところがあったし、さらに40号車が次のSCでもさらに絶妙のタイミングだったので、かなり間を開けられたから、難しいかなと思っていたんですけど、最後まで諦めなくて良かったですね。いいことありました、諦めなければ。でも、やっぱり3人で、最後の4時間、タイヤをきっちりマネージメントできたっていうのは大きかったと思います。僕が抜けたのは、やっぱりタイヤが残っていたからですよ、そこは40号車との差だと思っています。向こうも同じ条件だったので」

中島保典

「最後まで分かりませんね。最後はちょっと届かないかな、ぎりぎり届くかな、と分からない感じだったんですが、まさかこんな展開になるとは。約1年ぶりの優勝になりますかね、本当に嬉しいです」

黒澤琢弥

「最後すごかったね、大逆転で。ラップダウンになっちゃったんですが、取り返して松井さんも頑張ってくれて、最後に見せ場を作って、8時間で4〜5秒差でゴールなんてね! いつ以来か覚えていないんだけど、10何年勝っていないんで。雨の中、クルマのバランスはすごく良かったんで、楽しんでレースできました!」

ST-5クラス優勝 #69 BRP☆J’S RACINGフィット

大野尊久

「僕は雨が降ってきた時と、上がってきたぐらいまでのところを担当しましたが、スリックでそのままステイで行ったのが良かったですね。よそがレインで行っているところをスリックで行って、タイムが変わらなかったんで、そのまま行ったんですよ。それで1ピット分、稼げて。なにより4人が最初から最後まで全開で走り続けられた、マシンを仕上げてくれたメカニックたちに感謝したいです」

井入宏之

「言われたとおり、頑張りました(笑)。ちょっと展開的にややこしい天気に翻弄されましたが、予定どおり。ミスすることなかったんで良かった、僕的には。いい仕事ができてホッとしています。次の岡山、出るかもしれないし、分からないけれども、チャンピオン獲得に貢献できるよう、また出られたら頑張ります」

梅本淳一

「流れが良かったんで、宿敵がいなかったのが残念でしたけど、今回は井入劇場で(笑)。井入で始まり、井入で終わるという! 本当にいいドライバーですね、いい流れを作ってくれました。今回は暇で、僕は20分しか走ってない。でも、同じチームの19号車とバチバチやっていたんですよ。本当にレースしたって感じです、真面目に」

チャールズ・カキン

「頑張りました、前回のレースよりも。優勝できて、すごく嬉しいです。ありがとうございます。たぶん、次のレースと最終戦も出る予定です」

 

(はた☆なおゆき)

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