SUPER TAIKYU

RACES ARCHIVE 2015

REPORT

第3戦プレビュー

たかが1時間増? されど1時間増?
富士SUPER TECが国内最長、8時間レースに!

 全6戦で争われるスーパー耐久シリーズは、ここから中盤戦に突入。富士スピードウェイを舞台とする第3戦“SUPER TEC”は、昨年より1時間増の8時間レースとして争われる。過去に十勝スピードウェイで24時間レースが開催され、筑波サーキットで もナイター12時間レースが開催されたことを思えば、「そんなに長くはないのでは?」と思う方もいるに違いない。

 確かに比較すれば、長くない。しかし、厳しさではどうだろうか? 筑波のナイター耐久はゴールこそ朝方だったが、文字どおり大半を夜間に走っていた。十勝24時間は3倍の長さだが、気候が穏やかな北海道が舞台。それに比べ、“SUPER TEC“は初 夏の昼間にスタートを切り、間もなく日没というところでフィニッシュする。そう考えると、暑さはより厳しいことに間違いはない。

 加えて時期もポイントになる。そう、今は梅雨時なのだ。現時点での週末の天気予報では、曇り時々雨を告げており、レース中、絶えず降っている可能性も、あるいは降ったりやんだりを繰り返す可能性もある。そうなれば、戦術面にも緻密な対応が必 要となり、よりレース展開が混沌としたものになってしまう。

 そういった状況の中で、レースの1時間増はとてつもなく長く感じられるのではないだろうか。今回は、5時間レースだった、ツインリンクもてぎの第1戦に続き、Dドライバーとして4人目のドライバー登録が可能。そこで、加えられたドライバーの多くは、まさに助っ人と言うべきだろう。あえてピックアップするような、無粋なことはやめておく。御自身でエントリーリストを見て、確認されたし。「おおっ、このドライバーが」と感じるドライバーが何人もいるはずだ。

 さらに今回はスポット参戦が許されたため、2カーエントリーのチームもいくつかある。もちろん、レギュラーの車両を援護するのが最大の目的であろうが、スポットの車両も高得点を獲得すれば、それはすなわちレギュラーの車両がライバルとの差を広げられるということ。どういうフォーメイションを見せるのか、注目したいところだ。

REAF REAL ESTATE KiiVA BMWがST-Xクラスのトップ

 ST-Xクラスでランキングトップにつけるのは、HIRO/片岡龍也/阿部翼組の#16REAF REAL ESTATE KiiVA BMWである。第1戦で3位、第2戦で優勝とあって結果だけ見れば、ごく自然に感じるかもしれないが、実際にレースを見た者なら、少なくても序盤に存在を強く感じはしなかったはずだ。それもそのはずで、このチームはレース中に速さを誇示していない。

 むしろ、2戦を終えて速さを感じるのは、YUKE TANIGUCHI/峰尾恭輔/元嶋佑弥組の#3 ENDLESS ADVAN BMWだ。第1戦は予選でトラブルに見舞われ、グループ最下位からのスタートであっても優勝を飾り、第2戦もまたレースの大半を支配した。ところが、終盤にまさかの接触が! 負ったダメージは大きく、無念のリタイアを喫している。

 予選と決勝の結果が直結しない、それが現時点でのST-Xクラスの印象であり、スーパー耐久の原点回帰さえも。創世記にはよく語られたものだ、「筋書きのないドラマを地でいくレースだね」と。近年は、そのイメージがかなり薄らいでいたが、歴史は繰り返されるのかもしれない。きっと読めないレースになるはずだ。

 さて、ST-Xクラスには初めてスポットのエントリーが。フェラーリF458 GT3を持ち込む、クリアウォーターレーシングはシンガポールの、Aドライバーのモック・ウェン-サンとともに、昨年GTアジアでチャンピオンに輝いたチーム。これに1週間前のGTアジアで優勝を飾ったばかりの濱口弘が加わるだけに、その戦闘力は侮り難いものがあるに違いない。

連勝重ねるか、ST-2クラスのDAMD MOTUL ED WRX STIが

 今回はST-1クラスにも久々のエントリーが。坂本祐也/石原将光/池田大祐/余郷敦組の#51 DIAMANGO BMW Z4の孤軍奮闘にはなるが、そのスピードは進化を遂げるST-2クラス勢にとっては、ちょうどいい物差しになるのではないか。もちろん、ST-1クラスとして引けを取ることはできず、とある目的を抱いての参戦とも。レース後に、達成感を抱いてくれることを祈りたい。

 ST-2クラスでは前回、大澤学/吉田寿博/松田晃司組が優勝を飾っている。#59DAMD MOTUL ED WRX STIはデビュー2戦目で初優勝、第1戦でもポールポジションを奪い、すでに侮り難いポテンシャルを示している。果たして、今後どこまで進化していくのだろう。ただ、下垣和也/小林且雄/松本武士組の#20 RSオガワADVANランサーがエンジントラブルのため決勝を走れず、前回は大澤組にかなり楽な展開を許したのも事実である。今回も下垣組には伊藤勝一が加わり、第1戦で見せてくれたブランクを感じさせない走りを、再び小林とともに披露してくれることを期待したい。そして、大澤組との再び激しいバトルにも!

レクサスRC350が一挙3台デビュー! ST-3クラスの戦力図に変化も?

 ここまでの2戦は、前嶋秀司/佐々木雅弘/佐藤公哉組の#34 asset ings テクノZ34がいずれも制している。それだけ安定した速さを誇る車両を、急きょスイッチすることが決定。テクノファーストもレクサスRC350を投じることになった。当初はル・ボーセモータースポーツだけの予定が、前回のクラッシュの影響もあるのだろう、サードレーシングも変更を決め、一挙に3台がデビューすることとなった。

 エンジンは既存のIS350同様、V6の2GR-FSEを搭載するだけに非常にトルクフルで、フェアレディZ勢にもストレートパフォーマンスでは引けを取ることはないだろう。
問題は足がどれだけ仕上がっているか。コカコーラコーナーや100Rのような高速コーナーもあれば、今の富士にはセクター3のようなテクニカルコーナーもある。昔の富士ならエンジン勝負だったものの、今はそうはいかず。いったいどういった展開になるのだろうか?

 何はともあれ、Z勢や植田正幸/阪口良平/堀田誠組の#38 ムータレーシングTWS IS350には、千載一遇のチャンスになる可能性も。Z勢では、前回の2位で勢いづく長島正明/田中徹/田中哲也組の#15 岡部自動車DIXCELチームテツヤZ34に、特に注目したい。

24台が集結したST-4クラス、これはもう超激戦は必至!

 ST-4クラスのエントリーは24台と、これだけでレースが成立してもいいだけの台数となった。車種のバラエティに富む一方で、ストレートの長い富士ではホンダS2000勢が圧倒的に有利だと、以前だったら言い切ることもできた。しかし、昨年からチーム側からの自主規制によってリストリクタ—が装着され、もはや絶対的とは言いがたくもなっている。加えてトヨタ86勢が足の洗練や徹底的な軽量化で、旋回性能を高めているのが現状だ。また、雨が降って来ようものなら、ホンダインテグラ/シビック勢がFFとあって、俄然元気になる。したがって、このクラスも予想困難であると、言わざるを得ない。むしろ、どこが勝ってもおかしくないという方が、的確ではあるだろう。

 その中で、注目してほしい一台がある。それが#86 TOYOTA Team TOM’S SPIRIT 86だ。蒲生尚弥、井口卓人、そして木下隆之に加え、Dドライバーには小野田貴俊の名前が。今年からGAZOO Racing 86/BRZレースはプロフェッショナルシリーズ、そしてクラブマンシリーズに分けられたが、その後者の序盤戦3レースのポイントリーダーが乗れることになり、小野田が権利を獲得したのである。実際のトップは遠藤浩二なのだが、ST-2クラスのレギュラードライバーとあって辞退。それで小野田にお鉢がまわってきたわけだが、こういう強運というのは、何かといい具合に連鎖しがち。今回も結果を残せば、違った将来が見えてくるかもしれないし、逆に強力なパートナーたちに囲まれているだけに、足を引っ張ることも許されない。小野田にとって「試される」一戦を、どうか注目してほしい。

8時間レースに、デミオディーゼルターボの好燃費は、どう影響するか

 ここまでの2戦、いずれも優勝を飾っているのがホンダフィット3。大野尊久/梅本淳一/井入宏之組の#69 BRP☆J’S RACINGフィット、そして山下潤一郎/山田英二/加茂新組の#2 ホンダカーズ野崎with CUSCO & BOMEX FITとで優勝を分け合っているが、ST-5クラスにおいて、いずれにせよ速さでフィット3にかなうクルマは当面現れないだろう。今回もまた、3台によるトップ争いが繰り広げられるに違いない。

しかし、あえて注目したいのが、野上敏彦/谷川達也/野上達也組の#17 DXLアラゴスタNOPROデミオSKY-Dだ。毎回取り上げているが、このディーゼルターボ搭載車両の燃費の良さは圧倒的で、前回の3時間レースを1回の給油だけで乗り切っている。
ピットストップは2回義務づけながら、何と1周目にピットに入り、ドライバー交代だけを行って、すぐコースに戻ったからである。その甲斐あって4位につけただけに、引き続き好燃費が影響をもたらす可能性も。

 ちなみに今回は8時間の長丁場とあって、ピットストップは4回が義務づけ。きっと何か作戦を高じて、順位を上げてくるのではないだろうか。その作業内容に注目あれ。

 

(はた☆なおゆき)

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