予選レポート
難条件の中、ARN AMG SLS GT3の永井宏明組がPPを獲得する
スーパー耐久シリーズ第3戦“SUPER TEC”が富士スピードウェイを舞台に行われ、7月4日に行われた予選は、雨と霧に見舞われて、極めて難しいコンディションになっていた。その中でポールポジションを獲得したのは、#8 ARN AMG SLS GT3の永井宏明/佐々木孝太/佐藤敦/田島剛組組だった。
Aドライバー永井宏明が激走を見せ、2番手に1秒6の差をつける
予選に先駆けて金曜日に行われた専有走行は、3セッションがすべてウェットコンディションとなっていた。梅雨時というだけでなく、台風接近の影響で雨足は絶えず変化し、走行を控えた車両もあったほど。それでも、最終セッションの序盤にはやや勢いを弱めたこともあり、#8 ARN AMG SLS GT3を駆る佐々木孝太が1分54秒001をマークしてトップに。その後、再び勢いを強めたため、そのまま金曜日のトップタイムとして残されることとなった。
土曜日は一転して雨はやみ、早朝こそ路面の一部は濡れていたが、10時40分から30分間のフリー走行は、ほぼドライコンディションに改められていた。ドライタイヤを装着して周回が重ねられる中、トップタイムを記したのは#24 日産自動車大学校スリーボンドGT-Rの藤井誠暢。ただひとり1分40秒台に乗せ、40秒956をターゲットタイムとすることとなった。
そのフリー走行終了から1時間あまりで、予選がスタートした。Aドライバーのセッション直前からサーキットは霧に包まれるようになっていたが、路面を湿らせるまでには至らなかったため、全車がドライタイヤを装着。しかし、それから間もなくポツリポツリと雨が落ち始め、次第に路面は黒くなっていく。そうなることを誰より見越していたのが、#8 ARN AMG SLS GT3を駆る永井宏明だった。アウトラップからタイヤにしっかりと熱を入れ、まわりがまだ1分48秒台に留まる中、最初の計測周から1分46秒345をマークし、次の周には43秒696にまで短縮。それどころか、さらに次の周には43秒021にまで叩き込むこととなった。
ほぼ同じタイミングで#16 REAF REAL ESTATE KiiVA BMWのHIROMASA NISHIDAが2番手に浮上するが、1分44秒632を出すに留まり、永井とは1秒6もの差をつけられてしまう。もちろん、その後もコースをNISHIDAのみならず、誰もが激しく攻め立てていくが、もはやタイムアップできるような路面状態ではなくなっていた。
続いて行われたBドライバーのセッションも、ウェットタイヤで行くまでではない微妙な路面状態で、プラチナドライバーを含めていたため、タイムアップの期待がかかるも、路面の一部に水たまりが残っていたり、縁石が濡れていたりしたため、誰も限界まで攻め切れなかったよう。トップタイムは#16 REAF REAL ESTATE KiiVA BMWの片岡龍也が記すも、1分43秒271がやっとで、Aドライバーセッションで永井が記録したタイムを上回れず。その永井の奮起に応えようとした佐々木孝太ながら、完全なクリアラップが取れずに44秒337を出すに留まってしまう。
それでも片岡と佐々木孝太の差は1秒1だったこともあり、永井の作ったマージンによって#8 ARN SLS AMG GT3は初のポールポジションを奪うこととなった。2番手はもちろん#16 REAF REAL ESTATE KiiVA BMWが獲得し、3番手にはGAMISANと星野一樹がアタックを担当した、#1 GTNET ADVAN C-WEST GT-Rがつけた。
3戦連続でDAMD MOTUL ED WRX STIがST-3クラスの予選トップに!
今シーズン初めてST-1クラスにエントリーが1台だけだがあり、坂本祐也と池田大祐がアタックを担当した、#51 DIAMANGO BMW Z4はST-Xクラス勢に続く総合10番手につけ、進化を遂げるST-2クラス勢をしっかり抑えることとなった。
そのST-2クラスでは、大澤学と松田晃司が揃ってトップにつけた、#59 DAMD MOTUL ED WRX STIがもちろんトップに。これで3戦連続となり、下垣和也と小林且雄がアタック担当の#20 RSオガワADVANランサーに合算タイムで、実に2秒2もの差をつけることとなった。3番手は#31 HASEPRO RACING LANCER EVOLUTION Xが獲得。
ST-3クラスのAドライバーセッションでは、#195 岡部自動車ZEROSUN195Z34を駆る安宅光徳に1000分の2秒差でトップを明け渡した、#38 ムータレーシングTWS IS350の植田正幸だったものの、その無念をチームメイトの阪口良平がしっかり晴らすことに。ただひとり、1分55秒を切る、54秒324をマークしてBドライバーセッションのトップに。#195 岡部自動車ZEROSUN195Z34のBドライバー、小泉和寛は阪口から2秒3遅れの5番手に甘んじたこともあって、トップには今シーズン初めて#38 ムータレーシングTWS IS350がつけることに。そればかりか、ST-2クラスのトップと2番手の間に割って入り、総合では12番手にもつけていた。
クラス2番手は#15 岡部自動車DIXCELチームテツヤ34が、3番手は#14 岡部自動車KYOSHINマイカーズZ34、そして5番手には#195 岡部自動車ZEROSUN195Z34が順序良く並ぶ中、3台が一挙に初登場となったレクサスRC350勢は、明らかに苦戦を強いられていた。それでもいち早くマシンを仕立て上げていた#62 DENSO Le Beausset RC350が6番手で、上位との差を最小限に留めることに。また、完成が早朝で、車検にぎりぎり間に合った#39 SARD Racing RC350は、平手晃平が単独でのタイムでは3台のうちで最速。逆に#34 asset ingsテクノRC350は今回をテストの機会と割り切り、あえて予選では速さで競おうとはしていなかった。
ST-5クラスでも、#69 BRP★J’S RACINGフィットが3戦連続で予選トップ
ST-4クラスとST-5クラスによる第2グループは、AドライバーセッションとBドライバーのセッションの路面状態の違いが、第1グループ以上に広がっていた。ちなみにST-4クラスのトップは、藤田竜樹と吉本晶哉がいずれもトップだった#40 車買い取りHERO’S×TRACY SPORTS S2000が獲得しているが、ふたりの差は実に5秒半。いかに異なる状況においても対応できていたか、分かろうというものだ。2番手には植松忠雄と太田侑弥がアタックを担当した#93 TAKUMI×UEMATSU×SKR S2000が獲得し、S2000勢が上位を独占する中、野間一と中島佑弥がアタックを担当した、#333 GLORY RACING A-ONE FN2が3番手で続くこととなった。
ST-5クラスでは#69 BRP★J’S RACINGフィットが、3戦連続で予選トップに。今回は大野尊久と井入宏之がアタックを担当し、ふたりともライバルを寄せつけなかった。2番手は#2ホンダカーズ野崎with CUSCO & BOMEXフィットが獲得するが、名手・山田英二が自己ベストを記した後にクラッシュ。決勝レースまでにはしっかり修復されていることを祈りたい。3番手には#19 BRP★J’S RACINGフィットがつけて、今回もフィット3勢が上位を独占した。
さて、決勝レースの行われる日曜日だが、早朝にフリー走行は行われず、8時55分にはスタート進行が始まることとなっており、決勝レースそのものも10時からの開始が予定されている。残念ながら予報で告げられる天気は思わしくないが、ドラマチックな展開となることは必至。それを存分に楽しむためにも、観戦される方にはしっかり雨対策をお願いしたい。
ST-Xクラストップ(ポールポジション)#8 ARN SLS AMG GT3
永井宏明
「僕の走るセッションは、まだドライで路面状態も良かったので、早いうちにタイムを出そうということで、1周目からプッシュさせてもらったんですけど、それがうまくはまりまして、いいタイムを出すことができました。自分なりにも手応えはありましたし、孝太くんにうまくクルマをつなぐことができたので、Bドライバーのセッションを楽しく見ていました。明日はいいスタートを決めて、しっかり自分の仕事をこなしていければと思っています」
佐々木孝太
「明日はいちばん前からのスタートですから、そのまま勝ちたいですね。僕の走った時はコンディションが難しくて、ちょっといいところで詰まっちゃったんですけど、ああいうコンディションでは、やっぱりGT-Rが速い。まだドライのセットでは今イチなのかなというところがあるんですが、ウェットは今回たっぷりと走っていて、かなりいいところが出ているので、観客の皆さんには申し訳ないけど、雨のレースで勝てればいいな、と思っています」
ST-1クラストップ #51 DIAMANGO BMW Z4
坂本祐也
「予選は順調に。雨が降り出したんですけどスリックで行って、若干滑るようなところもあったんですが、無理はしませんでした。クラスが僕らの1台しかいないんですが、去年、一昨年と実は完走していないんですよ。マシントラブルで2年連続リタイアしているので、今回はしっかり走り切ろうというのを、チームの目標として出ています。明日は雨っぽいですけど、しっかり走り切って、ここ2年できなかった完走を目指します」
ST-2クラストップ #59 DAMD MOTUL ED WRX STI
大澤学
「だいぶ微妙なコンディションで、路面は全面濡れていたので、ちょっと様子見ながら行っていたんですが、その中で攻めて走れたので、そこそこタイムが出たのかな、と思います。僕が走っている時はどっちがかと言うと、路面状態が悪化していく感じでタイヤが温まっていかなかったので、今ひとつ納得のタイムではないんですけどね。ただ、明日は8時間もあるので、予選はあんまり重要じゃないかとも思うんですよ。ただ、予選のトップで1ポイントを獲得できたので、そこは嬉しいですね」
ST-3クラストップ #38 ムータレーシングTWS IS350
植田正幸
「ああいうコンディションなので早く出て行って、いいコンディションが2周あったんですけど、その2周ともダンロップコーナーで行き過ぎちゃって、ちょっと大回りしちゃって。次に行ったら、もう路面が厳しかったのでトップと1000分の2秒ぐらいの差だったのですが、僕らには良平が控えているんで、そこは安心して(笑)。良かったです。ホッとしています」
阪口良平
「練習からドライでもウェットでも調子は良かったし、すごくトラクションがかかるようにクルマを持っていくことができたので、どんなコンディションであってもポールが獲れる自信はありましたけど、3戦目でやっとなので、ちょっとホッとしました。もう(勝っても)いいんじゃないでしょうか(苦笑)。今年はS耐だけじゃなく、クラブマン耐久から86レースまで、全部2位とか3位とかなんで、そろそろ勝ちたいです!」
ST-4クラストップ #40 車買い取りHERO’S×TRACY SPORTS S2000
藤田竜樹
「昨日まで全然セットが出なくて、中団以降だったので、どうしようかなというところだったんですが、とりあえず考え方をリセットして。そうやって悩んでいた分、全体的なバランスが良くなっていたので、予選はスリックタイヤで、ウェットコンディションという微妙な感じでしたが、最後はドライバーで何とかしようと、Bドライバーの吉本選手と。ガッチリ行っていただけたおかげでポールが獲れました!」
吉本晶哉
「毎周、毎周コンディションが変わって、各コーナーでも濡れている量が違うので大変でした。まぁ、みんな一緒ですけどね、それは。でも、ちょうどいい時にクリアが取れました。決勝レースに向けては、もっとレインコンディションの合わせ込みをしないと、ちょっとまだやばいかな、というところはありますが、それでも一生懸命頑張ります」
ST-5クラストップ #69 BRP★J’S RACINGフィット
大野尊久
「予定どおりと言うか、テストの成果が出て、足がだいぶ決まっていたので、雨が降っても安心してスリックでも全然行けたので良かったです。僕の時はコンディション、ブレーキングポイントが30m、ストレートとダンロップコーナーではずらしたぐらいの違いで、あとは基本的には踏んでいけたので。嬉しいですね、これで3戦連続ポールですから」
井入宏之
「言われたとおり走りました(笑)。まぁ、予定どおりの結果を、ありがとうございます。クルマはすごく乗りやすい、ワイドレンジだから、どういう状況で、どんなタイヤでも同じ動きしかしないようになっているので、全然大丈夫で。2号車(ホンダカーズ野崎with CUSCO & BOMEX FIT)がクラッシュしているので、よけいプレッシャーはなく走れたので、喜ぶわけじゃないけど決勝までに直してもらって、またいい戦いができたらいいな、と大人のコメントで(笑)」
(はた☆なおゆき)