第6戦プレビュー
ST-3クラスとST-4クラスのチャンピオンの行方は?
スーパー耐久の最終戦が、鈴鹿サーキットを舞台に10月24日(土)〜25日(日)に開催される。過去4年間はWTCCとの併催だったこともあり、昨年の2レースに分けたのを筆頭に通常とは異なる形態でレースが行われてきたが、今年は単独開催ということもあり、全クラス混走の3時間レースに戻された。
やはり焦点のひとつとされるのが、2クラスに残されたタイトルの行方だろう。片や一騎討ち、片や6チームに権利が残された大混戦と、展開は実に対照的だ。まずは、そのあたりから話を進めていくこととしよう。
asset ingsテクノRC350を、岡部自動車DIXCELチームテツヤZ34が7ポイント差で追う
ST-3クラスのタイトル争いは、先に述べたとおり一騎討ちとなっている。#34 asset ingsテクノRC350の前嶋秀司/佐々木雅弘/佐藤公哉組がトップで、7ポイント差で追いかけるのが#15 岡部自動車DIXCELチームテツヤZ34の長島正明/田中徹/田中哲也組である。当然のことながら、前嶋組は勝てば文句なし、2位でも逃げ切れる格好となる。逆に言うと、長島組は勝ってなお、前嶋組が3位以下でないとチャンピオンは獲得できない。前回は前嶋組が勝っているだけに、圧倒的に有利なように感じられるかもしれないが、筆者は五分と見る。
その根拠は、前嶋組のレクサスRC350がデビューから、まだ4戦で発展途上にあり、速さも信頼性も、日産フェアレディZの方が優るということ。その上で、Zを走らせるOKABEJIDOSHA motorsportが3台体制であることが、重要なポイント。長島組を逃がした上で、#14 岡部自動車KYOSHINマイカーズZ34の山崎学/増田芳信/小松一臣組、#195 岡部自動車ZEROSUN195Z34の安宅光徳/小泉和寛/輿水敏明組とで、前嶋組の包囲網を築いてしまえばいいのだ。ただ、これが「言うは易し行うは難し」の典型的なパターンでもあって……。
そして、もう一台鍵を握ってくるのが、#38 ムータレーシングTWS IS350の植田正幸/阪口良平/堀田誠組だ。現状、速さではST-3クラス随一ではあるのだが、不運なトラブルに見舞われることも多く、表彰台すら第2戦の一度しか上がれていない。だからこそ、最後に一矢報いたいのは間違いなく、タイトルの行方を気にすることなく、必勝を期しているはずだ。もし勝てば、ランキング3位となる可能性もあるだけに、それはもう当然のこと。植田組に限らず、王座獲得の権利がないチームが勝ったとすると、状況は大きく変化する。
長島組が予選トップで、決勝で2位となったとしても、前嶋組は4位ゴールでいい。もし、予選トップでなければ、5位でも同ポイントに並ぶが、優勝回数で逃げ切りが決まるからだ。4位、5位であるなら、TECHNO FIRSTのチーム力からすると、そう難しいことではないだろう。何はともあれ、どちらがチャンピオンになるにせよ、先にゴールした方に決まるのが望ましいし、そういう展開にしたいとお互い思っているはずだ。
6チームの王座獲得の権利が残されたST-4クラス
一方、ST-4クラスは近年まれに見る大混戦。6チームにチャンピオン獲得の権利が最終戦まで残されたのは、ひょっとすると初めてかもしれない。しかも、クルマにもトヨタ86、ホンダインテグラ、ホンダS2000と違いがあって……。もし、雨でも降れば、#58 ウィンマックスTEINワコーズKRP☆DC5の小林康一/塩谷烈州/辻佐紀子組に、極めて有利な状況になりそうだ。ただし、この原稿執筆時の天気予報では、日曜日の降水確率は、たった10%ではある。
ちなみに小林組と、同ポイントでトップに立つ、#52 埼玉トヨペットGreenBrave86の番場琢/服部尚貴/平沼貴之組、#13 ENDLESS ADVAN 86の山内英輝/村田信博/島谷篤史組は、勝てば無条件に決まり。対して、#95 孚海國際×SPOON S2000の松井猛敏/中島保典/黒澤琢弥組、#40 TRACY SPORTS ings SSR S2000の藤田竜樹/筒井克彦/吉本晶哉組、そして#86 TOYOTA Team TOM’S SPIRIT 86の蒲生尚弥/井口卓人/松井孝允組は、勝っても上位3チームが表彰台に立たれたら、大逆転の可能性は喪失すると考えていいだろう。
万が一、この6チーム以外が勝ったとして、現在のトップ2チームがノーポイントに終わったとすれば、上位入賞回数の違いで番場組が王座を獲得。しかし、そうなった時はよほどの大波乱があったということでもあり、この状況は避けていただきたいところ。
正直なところ、予想は極めて困難だ。まず予選と決勝の結果が、限りなく一致しないのが、このクラスの特徴でもある。今年のST-4クラスでは予選トップだったチームが、その真優勝したレースが一度もなく、それどころか表彰台に立ったのも2レースのみ。それだけバトルが激しく、実際に他のクラス以上にトップが入れ替わり続けているからだ。何はともあれ、勝ったチームに栄冠が輝く、そんな展開になってくれることを祈るしかない。
マークXがデビュー、そしてRSオガワがついにエボX投入!?
次なる焦点は、ST-3クラスに埼玉トヨペットGreenBraveが、トヨタマークXをデビューさせることだろう。初めてレースを戦う車両だけに、その実力は未知数ながら、ひとつ言えることは、まずエンジンはIS350やRC350と同じ3500ccの2ZRを積むため、その点でのパフォーマンスは同等であろうということ。それとホイールベースが長いので、少なからず高速コーナーでは有利かも。そして、何よりノーマルでの比較になるが、IS350とは50kg、RC350とは140kgも軽いのは重要なポイントといえそうだ。もっともレーシングカーは軽量化が可能なので、そこまで大きな差とはならない可能性もあるが……。
その#68 埼玉トヨペットGBマークX G’sを駆るのが、脇阪寿一と脇阪薫一であるのも、重要なポイントだ。脇阪兄弟が同じレースに、ライバルとして挑むという構図が圧倒的に印象深いものの、同じクルマを走らせるのは、これがもちろん初めてではない。02年の鈴鹿1000kmではスープラで総合優勝を、03年の十勝24時間ではアルテッツァを駆り、当時存在したグループNプラスで3位にも入った経験がある。つまり脇阪兄弟としての入賞率は、極めて高いというわけだ。クルマの仕上がり具合にもよるが、これはもう注目しないわけにはいかない。
車両を変更した有力チームについても紹介しよう。まずはST-2クラスの#20 RSオガワADVANランサーの下垣和也/松本武士/近藤説秀組が、ついに三菱ランサーエボリューションXを投入する。これは従来のエボIXにトラブルが相次いでいること、そしてエボXが高速コーナーに強いことから、鈴鹿では有利だという判断から。したがって、こちらは積極的な視野からのスイッチなのだが……。
ST-5クラスの#19 BRP★J’S RACINGフィットの古宮正信/奥村浩一/新垣元組は、ホンダフィット3からフィット2にスイッチする。というのは、前回のレースでフィット3がクラッシュし、修復が間に合わず。やむなく、13年にチャンピオンとなったフィット2を投じざるを得なかったからだ。一時は欠場も考慮したというものの、#2 ホンダカーズ野崎with CUSCO&BOMEX FITの山下潤一郎/山田英二/加茂新組とは同ポイントの2位で並んでいるため、「戦わずして、敗れるのだけは避けたかった」と奥村。しかし、フィット2には軽さと燃費の良さというメリットもある。そのあたりを積極的に生かした展開を期待したい。
チャンピオンチームは、果たして有終の美を飾れるか?
普段のプレビューでは真っ先に取り上げる、ST-Xクラスではあるが、すでにチャンピオンは#3 ENDLESS ADVAN BMWのYUKE TANIGUCHI/峰尾恭輔/元嶋佑弥組に決定。だからといって見どころに欠くことはないだろう。TANIGUCHI組が4勝目を挙げて、有終の美を飾れるか。もちろん、ライバルたちが今季最後のレースを制し、すっきりシーズンオフに突入したいと考えていよう。中でも、必勝体制で挑むのは、昨年のチャンピオンチーム、#1 GTNET ADVAN C-WEST GT-RのGAMISAN/星野一樹/吉田広樹組。何しろ今年は、トラブルの連発。前回も「勝てるレースだった」と星野は語るも、無線の故障で天候変化にうまく対応できず。逆にその天候変化をうまく利用し、タイヤ選択が大正解。#5 MACH MAKERS GT-Rの白井剛/青木孝行/藤波清斗組は、その勢いのまま連勝を、と確実に思っているはず。
ST-2クラスでは、#59 DAMD MOTUL ED WRX STIの大澤学/松田晃司/吉田寿博組が、すでに3連覇を達成。第2戦以来となる連勝記録を『5』にまで伸ばそうと、全力で挑んでくるに違いない。また、#31 HASEPRO RACING LANCER EVOLUTION Xの朝倉貴志/長谷川智秀/長谷川奉徹組は、ランキング2位を確実なものとするため、これまで以上に積極的な展開を繰り広げてくれるだろう。
そして、ST-5クラス。いち早くチャンピオンを決めた#69 BRP★J’S RACINGフィットは、前回のレースで大野尊久がホームコース岡山で錦を飾っただけに、今回は梅本のホームコースで、また錦を飾りたいと思っているはずだ。これに山下組がどうからむか。先にも述べたとおり、ランキング2位がかかっているだけに、きっと攻めのレースを見せてくれるだろう。
(はた☆なおゆき)